街を出たアルフェリアは、とりあえずストレシアの中心の方に向かう気でいた。
そのことに特に理由があったわけではない。
目的も、帰る場所もないのだ。気が向いた時に気が向いたところへ行くだけ。
それは楽なことであると同時にどこか寂しさを感じさせた。
五年前……いや、もっと前。ランディ家に引き取られ、母が死んだ時からずっと……
一人旅というのはどうも手持ち無沙汰になる。
喋る相手もなく、目的らしい目的もなく。ただ歩いていると、まるでその暇を埋めようとでもするかのように昔のことばかり思い出されるのだ。
腕試しなどと言ってはいるが、実際はそんなものどうでも良かった。なんでもいいからなにか目的が欲しかっただけだ。
ふぅ……
小さく息を吐いてずれかけていた焦点を戻す。ぼんやりとしていた世界が現実に戻る。
道のはずれに二つの人影が見えた。休憩をしているのだろう。
一人でいたくない気分になっていたアルフェリアは迷わずその人影の方へと歩み寄っていった。
「やぁ、こんにちは。良い天気だね」
にっこりと人好きのする笑みを浮かべ、隣に座っても良いかと尋ねた。二人が特に拒否しないことを確認して横に腰を下ろす。
一人は長身で長い髪を首の真後ろで括っている男性。一瞬彼の容貌に目を奪われた。話には聞いたこともあるが、実際に目にするのは初めてだ。
白子――色素の欠落した人間。白子は成長できないと聞いたが……どこにでも例外と言うのはあるものなのだろう。
そしてもう一人は女性。彼女を見た瞬間アルフェリアの頭に浮かんだ言葉、それは……
ラッキー♪
あの人相書きの女性だった。さすがに彼女を騎士に引き渡すとまでは考えなかったが、情報だけでも多少の報酬は貰えるという事だから路銀の足しに出来るだろう。
驚きを表情に出さないように―特に彼女に対しての―アルフェリアは話を続けた。
「ありがとう。おれ一人旅してるんだけど、やっぱずっと一人だとちょっと寂しいからさ。休憩するときとかよく他の人と一緒にさせてもらうんだ」
「そうか。俺はフォルクス。あんたは?」
「おれはアルフェリア・ノーティス」
ノーティス。それはランディ家に引き取られる前の名前だ。別にランディと言う名前を特に嫌っているわけではない。が、わざわざトラブルを起こす可能性のある名前を使うつもりもなかった。
それからしばらく会話を交わし、彼らはアルフェリアが向かってきた方……西へ、アルフェリアは東へと歩き出した。
アルフェリアは次の街についてすぐ、彼女―レイチェル―のことを報告したのだった。