「さてっと」
レイチェルの情報を報告したことで多少懐はあったまった。
金が必要なわけではないがせっかくなのでもらった賞金首リストから適当なのを見繕って情報収集をすることにした。
が、最近はなんとか旅慣れてきたと言っても、もとは世間知らずのお坊ちゃん。
真偽定かでない情報がいくつも舞い込んできてはなかなか有用な情報を割り出すことが出来ない。結果、とりあえず一番情報の多かった賞金首を狙ってみようというなんとも頼りない結論に至ったのであった。
街から数キロ南に岩場があった。谷と言っても良いくらいの規模である。
ここからでは確認できないがなかには洞穴になっているところもあるだろう。
聞いた話ではこの辺に時々賞金首の男の一人が現れるのだと言う。
…………ここまで来てガセだったら言った奴はっ倒す!!
暑さにイライラつのらせつつ、とりあえず周辺を見てまわったが人影らしきものすら見つからない。
「くそっ、ガセネタかよ!」
思わず口をついて出た怒鳴り声。幸運(?)なことにそれが目的の者を呼び寄せることになった。
「ガキが何のようだ?」
突如降ってわいた声。岩陰から一人の男が姿を現した。
アルフェリアは冷静に今目の前に居る人物を自分の記憶と照らし合わせる。
間違いない。賞金首の一人だ。ニヤリと不敵な笑みを浮かべて男を睨み返す。
「あんたを捕まえに来たんだ」
「ほぉう。身の程を知らないガキってのは早死にするんだぜ」
男が一足飛びにこちらに駆ける。アルフェリアは急いで背中から剣を抜き、男が振り下ろした剣を自分の剣で受けた。甲高い金属音が静かな空気の中に響く。
男が楽しげに口の端をあげた。
「ガキの割になかなかやるじゃねえか、面白い」
しばらく両者一歩も引かない剣戟が続く。
その睨み合いは外からの干渉で崩れた。二人の間に矢が飛んできたのだ。
「…!」
アルフェリアが慌てて周囲を見まわすといつ集まったのか十数人の男達に囲まれていた。
目の前の男が皮肉げな笑みを見せた。
「言ったろ? 身の程知らずなガキは早死にするんだ」
どうやらこの騒ぎを聞きつけて男の仲間が来たらしい。
そういえばこいつ盗賊団の一味とかで賞金かけられてたんだっけ……
敵が一気に十数人に増えたにも関わらず、アルフェリアの行動はのんきなものだった。
「う〜〜〜ん……せっかくだから全部捕まえたいところだけどさすがにこの人数はキツイなぁ」
腕組みをして考え込んでいる。男達が色めきたった。
「ふざけてんのか!?」
「舐めてかかってると痛い目見るぜ!」
そんな男達の罵倒にも動じないアルフェリアに痺れを切らしたのか一人が弓を構える。それが合図だとでも言うように、男達が一斉に動いた。
「あのさ、オレまだ考えまとまってないんだけど……まぁいいや」
これ見よがしに溜息をついてぶつぶつと言っている。
あまりにも平然としているアルフェリアに男達は呆気にとられていたが放たれた矢はもう止まらない。
しかしその矢はアルフェリアに当たる前に下に落ちてしまった。
「魔法であんたら捕まえても修行にならないからさ、もうちょっと剣の腕あげてあんたらまとめて相手にしてやれるようになったらまた来るよ」
最初に戦った男、様子からするとこの集団のリーダーなのだろう。彼に向かってにっこりと、わざとらしいくらい爽やかな笑顔を見せて今度は周囲にもはっきりと聞こえるように呪文を唱えた。
―炎を司る者よ、我はアルフェリア・ノーティス
我が名を以って汝に願う
我が前に立ちふさがりし全ての者に
汝の力、示したまえ!!―
アルフェリアの周囲に炎が舞う。炎はアルフェリアを中心に円状に広がり、アルフェリアを囲んでいた男達は一斉に炎に巻かれて逃げまどうこととなった。
「油断大敵ってことだな。じゃ」
今度は風の魔法。
強い風の発生とほぼ同時にアルフェリアは地面を蹴った。
本来は相手を吹き飛ばす魔法だがその辺は応用次第。
風に煽られ通常の跳躍の倍近くまで飛びあがったアルフェリアは高い岩を飛び越え
てその向こうへと姿を消した。
あとには半ば呆然とアルフェリアが去った方を見つめる盗賊団の男達が居た。