ファンタジア

セザール7

「先に行きます!」
「あ! あ! ちょっ! ……ちょっとは待てよなあ、ったく」
 アルサロサの入り口のまで来ると、ルンドは手綱を俺に押し付けて馬車から飛び降りた。そのまま信じられない速さで走って行ってしまった。
 猪突猛進一直線。
 全く、あれで宮仕えなんて信じられないくらいだ。
 俺は、雨の降りしきる中、馬車に座って呆然としていた。

 

「じゃあ、納屋お借りします」
「どうぞ。この裏にありますよ。カギは掛けていませんから」
 俺は取り敢えず、馬を入れておく場所を確保した。宿の裏にちょうど良く納屋があったのだ。
 外に出ると、雨はすっかりあがっていた。
 町の人たちもちらほらと外に出てくる。
 空を仰ぐ。雲の切れ間から光の柱が降りて来て、町を照らし始めている。その、ひどく幻想的な風景にしばらく見惚れてしまう。
 気が付くと、辺りの人も同じようだった。
 何かを祝福するような、何かの始まりを告げているような、何かを予感される輝きが満ち溢れていた。
 ところが、

「行け!!」

 その一声は全ての物にひびを入れた。その場の全員が声の方、町の入り口を注目した。
 それは、蒼い鎧を着た兵士たちだった。
 兵士たちが十人ほど列になって町には入ってくる。
 全く無粋な奴らだな、と少々むっとなり、今声を張り上げた厳つい鎧を着た奴に近づく。
「おい、なんだお前ら。この町に何の用だ」
 俺は、町人を装ってそう言う。
 その男は、すごいしかめっ面をこちらに向ける。その顔だけで相当の威圧感がある。
「お前は何だ? この町の人間なら用は無い。引っ込んでいろ!」
 ムムッ
「な、なんだよその言い方は」
 と言いながら、そいつが着ている鎧を見る。左肩に大きく紋章が刻まれている。以前、本か何かで見たことがある。それは、
「エーレブルー、……エーレブルー国!? エーレブルーの奴がなんでこんな所に?!」
 ギラリと光る目で、そいつは俺を睨んだ。
「……。お前には関係の無い事だ。おとなしくしていろ。そうすれば、用は、無い」
 それだけ言うと、そいつは町の中へ歩いて行った。
 とてつもなく嫌な予感。
 不穏な影が、再び町を覆い始めていた。

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