「……というわけなのよ」
延々と五時間は語ったであろうか、フリージアはようやく動き続けていた口を閉じた。
語り終えた彼女の額に汗が一筋流れた。
一仕事終えたという達成感がそこから滲み出ていた。
「では、今までの話の要点をまとめると、フリージアさんは、今の私の生きている年代のビショップ様から数えて三代前のラジアハンドビショップ様で、ある日、なぜか生まれついてから使えていた魔法ラージミールをいつものように使っていたら、運悪く時の狭間を開けてしまい、そこで原理は分からないが、身体から離れて魂だけがそこに、いや、ここか。
ここに引き込まれて、未だにいて出られない状態なんですね。
しかも、これもなぜだか分からないが、自分の身体は石になってしまっていて何もすることが出来なかった。
でも、何もしなかった訳では無くて、魂を自分の身体そっくりに具現化することが出来るようになったり、神経を集中すると、外界の、つまりラージバル大陸全土を見渡す事も可能になった。
そして今では、自分の身体に触れて訳も分からずここに迷い込んできた人や動物達を、元の世界に戻してやる事も出来るようにすらなった。
という訳ですね」
ルンドが要約し終わると、フリージアは満足そうに首を縦に振って頷いた。
「そうそう、私はそれを言いたかったのよ」
そう言うなりフリージアはめいいっぱいの背伸びをした。
「あー久々に沢山お話ししたわ、楽しかった!
そうだ! 確かルンドさんは、私みたいに行方不明になってる現在のビショップを探してるんだったわよね?
じゃあ、今まで一緒にお話してくれたお礼に、今彼女がいる国へ飛ばしてあげるのと、更にサービスして、少し時間を戻してあげる!」
実は、先程の会話の五時間もの間にはフリージアのルンドへの質問責めもあったのだった。
素から押しの強そうな彼女だから、ルンドはなかなかフリージア自身の話を聞くことが出来ず、
(また2回キレた)今思うと、自分の過去もすべて話させられたなとルンドは思った。
しかし、その苦労は報われたようだ。
フリージアは空中に指で方円を書き始めると、見る見るうちに一つの直径70センチぐらいの
魔法陣を作り上げた。
更に短く詠唱すると、魔法陣の中心がうっすらと青白い光を放ち始めた。
「さあ出来たわ、これに入ればルンドさんの元居た時代に戻れるわよ」
ルンドは深く礼と感謝の言葉を述べると、足早にその中へ飛び込んだ。
「頑張りなさいよー!!」
彼女の声がルンドには遙か遠くで聞こえる様だった……
まだ太陽が昇りきっていない昼時、ルンドはとある宿を訪ねた。
入ったとたんに目に入ったのは、まだ年端もいかない子供を、変わった容姿の男がどうやら掌から出した炎で脅しているところだった。
それが弾け飛ぶと子供は慌ててその場から逃げ出した。
もし子供に何かするつもりなら止めなくてはと剣に手を掛けていたのだが、その心配も無かったようだ……。
「それにしてもえげつないことをするな、“魔法使い”?」
ルンドはその男に皮肉を込めて言ってやった。