「へー、こんな短期間に、お前随分と色々やってきたんだなぁ……」
と、始末書を確認する傍らルンドと近況について報告し合っていたグレッタが言った。
ルンドからの話がよほど興味を引いたのか、話し始めてからというもの、手はいっこうに動いていない。
理由はそれだけではないようだが……
「ああ、そっちも何とかやってこれたようで安心したよ、済まなかったな」
怠けているグレッタの分手を動かしていると言っても過言ではない位のスピードで、ルンドは更に速度を少しも落とすことなく一枚一枚確実に始末書を確認していく。
そんなこんなでもう既に、朝焼けが拝めそうな時刻になってしまっていた。
「いやー、お前が来てくれて助かったよ。もしあの時来てくれてなかったら今頃俺は王様に大目玉喰らってたからな。処理能力も高い高い、流石は神業とまで言われている事はあるよ」
ルンドの働きぶりを見て思わず満足そうに頷く。
「……その神業とかいうのはお前が勝手に付けたんだろうが……なんにせよ色々と迷惑掛けたから、一つ何でも言うこと聞いてやろうとくらいは思っていたからな、丁度良かったよ」
「えっ、そうだったのか? ……あのさ、これとは別にまだ溜め込んでる始末書の山があるんだけど……」
「言っただろう、一つぐらいは聞いてやろう、と、それがこれだ。他の始末書は自分で何とかしろ」
冷たく言い放つルンドのこれまた冷たい言葉にそりゃないよとガックリと肩を落とすグレッタだった。
コンコン
「あ、おいルンド、ウェノが来てる。ちょっと窓を開けてやってくれないか」
そう言われてルンドが窓を開けると、鳥と見分けがつかない程に精巧に出来た鳥像「ウェノ」が窓から滑り込み、グレッタが必至になって目を通している始末書の一山に向かって舞い降りた。
「なんだ、伝令か?」
グレッタが、ウェノの足首から手紙を外しているルンドに向かって訊ねると、開き読んでいたところでルンドが突然アッと声をあげた。
「しまった、忘れていた……」
「何だ、どうした?」
好奇心を抑えられずにルンドの肩越しに手紙を覗く。
そこにはそれを書いた人物が、まるで俺と喧嘩をしろと言っている様な文が連ねてあった。
その怒りの内容が最後の行までびっしりと書かれていて、遠くから見るとインクを全面にぶちまけた様に見える程だった。
しかし最後には明らかに違う何者かがわざわざ赤いインクで
「何やら完全に頭に血が上ってるらしいからなんとかしてやってくれ」
と書き足してあった。
「凄いなこいつ……お前に喧嘩売ってくる奴なんて滅多にいないぞ」
グレッタが明らかに違う所で感心する。
「早く撤回しないといけないな。
私のせいで、たった今ラジアハンド騎士達に足止めをされているらしい、……司令室に行ってくる」
言うとルンドは部屋を後にして司令室へと急いで行ってしまった。
「おーいっ! 残りの始末書どうすんだよーっ!!」
後にはグレッタの虚しい叫びだけが部屋にこだまするのだった。