ファンタジア

ブレス9(仮面と少女と竜使い2)

 皆様こんにちは。前回狸寝入りしかできなかった、情けないブレスです。あのおしゃべりドラゴンにいつか一泡吹かせなくてはいけないと考えている俺であります。アルサロサではなんだか騒ぎが起きているみたいですが、俺はラジアハンドで久々のバカンスを楽しんでいます。そこでラジアハンドの風習につてお話しましょう。ラジアハンドは神に祈る時間というものがあります。(さすが神力国家ってとこでしょうか?)朝起きてまず神にご挨拶。朝食を頂けることに神に感謝。昼食でも同じことをやり、昼下がりには街中に教会の鐘という鐘が鳴り鐘が鳴っている間はお祈りをして、鳴りやめばまた普通になにごともなかったかのように街が動き出す。夕食の時にやっぱり感謝をし、寝る前にご挨拶。この街ではそれが普通であり、やらない俺がおかしいのです。不思議な街です。

 

 俺はリットちゃんと別れ狸寝入りのまま寝たが、翌日昼まで寝ていた。水場で顔を洗い寝癖を直しババーから俺にという本を持ち、遅い朝食をとりに出ることにした。昼寝をしているのか、寝ているエンペランサを鞄におしこんで、本を片手に階段を降りていった。入り口の所でコクトーが本を読んでるのか小さな眼鏡をしていた。俺の気配に顔を上げ、本をパタンと閉じる音をたてた。
「よお、遅い朝だな。これからお出かけか?」
「ああ、腹が減ったから飯食いにな」
 俺はカウンターの前で足を止め遮光眼鏡をかけ、でかけようとした。
「ちょっとまて。俺も一緒にいいか? 俺も腹が減った。」
「ここはいいのか??」
「この時間は誰もこないし、泊まっていた客はお前が最後だよ。久しぶりにお前と笑いたくなった」
 そう言ってコクトーはカウンターの下を潜り出てきた。いいかげんなやつだ。
 それに俺と笑いたくなったって……まあ、悪い気はしないか。
 コクトーと共に宿を出た。鍵をしっかりかけ、主人が出かけているようなことが書いてある看板をドアノブに掛けた。二人並んで店が並ぶ路をあるいた。今日は天気が良く、広い道には日差しを 避ける傘の下に簡易テーブルがあり、思い思いにお茶を飲んですごしている人たちが沢山いた。
 ラジアハンド城がある場所は港から少し離れた、山に面した所にあった。領内に港があるもののこの城下の食事の食材は山の幸や、野菜になる。山が多く穀物の生産は多くはないが、港の近くにある少ない平野で、盛んに穀物を生産し、輸入に頼ることなく賄ってはいる。しかし、ラジアハンド城下では問題になるのが、たんぱく質の元になる魚や、肉類だった。港から来る魚は冷凍され来るものの、運ぶコストが高く付きなかなかの高級品であった。肉も柔らかくコクのある、牛肉は、山が多いため牧場がなく、生産されることがあまりなかった。そこで、多いのが鳥肉や、豚肉なのだが、野生の肉食動物達のかっこうの
獲物とされ、家畜の被害がとても多く決して安いものではなかった。そこで、レストランや、食材店では独自で生産者と契約し安いコストで、取引される方法が多かった。
 ブレスとコクトーが今から行こうとしているレストランは老舗の部類に入り、味、値段、共に城下街ではとても人気が高かった。食材も悪くなく当然シェフの腕も良かった。だが、値段が庶民的であるため 高価な物を好む貴族達には好まれることはなかった。ブレスは師匠が用事があっていない時はそこの店で食事をし、店のオーナーシェフには世話になっていた。コクトーも小さい頃からそこの常連だった。
「あそこのおやじ相変わらずなのか??」
 俺はコクトーに聞いた。コクトーは呆れ顔になり、うなずいた。
「あのおやじは俺より長生きするな」
 その時だった。鐘が鳴り響きだした。ゴーンゴーンと辺りに反響しさらに新しく鳴らしている音がまざり不協和音を奏でていた。辺りの人という人はその場に膝まつき聖ブライ教会に向かって祈りはじめた。突っ立っているのは俺とコクトーぐらいだ。
「おい、お前は祈らないのか?」
 俺は大声でコクトーに聞いた。一応神の信者のはずだが??
「俺は夜一人ひっそりと一般人より2倍祈っているから、昼間はやらない」
「ハァ? どういう理屈なんだ??」
「俺はそんなことをして、信者であることを確かめなくても根っからの信者だから、平気なんだ。」
 変な理屈をいう奴だが、俺はこいつは唯一の親友だと思っている。
 昼寝をしていてもこの音を聞けば一発で起きるだろう。そう、鞄の中で昼寝を しているヤツも例外ではなかった。
「うるさぁ――――――い!!」
 鞄の中から怒鳴り声が鐘の音に負けず劣らず聞こえてきた。そんなことこの街で訴えても無意味なのに。皮製の俺の鞄にコクトーは目を見張った。
「いまスゲー怒鳴り声がこの中から聞こえたぞ!!」
「ああ……ちょっとやっかいなもんに捕まってな〜」
 コクトーが鞄を開けようと俺の背中にある鞄を開けようとしたら、先に中のほうから開いた。中から飛び出してくるものがあった。当然エンペランサであった。
「うわっ!!!」
 コクトーが仰け反った。
「この街の鐘という鐘を全部溶かして、あたしの像を作ってやるっ!!」
 そう叫んで、その小さな口から小さな炎を吹いているのは解るだろう……
 俺は本当にやり兼ねないドラゴンを捕まえた。
「おとなしくしてろ! エス!」
 ドラゴンは一喝におとなしくなった。手を離すとおとなしく俺の肩に腹這い姿勢でおさまった。コクトーが驚いたまま見ていた。
「ねえ、この人固まってる」
 気持ちは解る気がする。
「コクトー。帰ってこい。昼飯がどんどん遅れる。詳しい話しは飯を食いながら話すから」
 俺はエンペランサをまた鞄に押し込み、レストラン“マウンテンズロイ”に向かうことにした。
 その店はやはり大通りから小道に入った所にあった。季節の花が店の前いっぱいに飾られている。昼下がりの祈りの時間もエンペランサが騒いでいるうちに終わり、店の中はすぐ座れる程度の人達がいるぐらいだった。
「あら! コクトー! いらっしゃい。!! ブレスもいるじゃない!」
 そう言って歓迎してくれたのは店の主人の妻、ナタリーだった。店の前の花は彼女が飾ったものだ。四人がけのテーブルに案内され、メニュー表が渡された。
「今日は何を食べる? オススメはベーコンと豚の燻製腸詰が入ったポトフのランチね」
 ナタリーは俺にとっては母親みたいなものだった。コクトーにとってもそうだった。いつも太陽みたいな笑顔をしている彼女を見ると暗い気持ちも晴れやかになるものだった。今日もその笑顔を見せてくれた。
「じゃ、それにしよう。ブレスは?」
「ああ、俺もそれがいい。あ、果物かなんかあるかな?」
 俺は鞄の中にいるドラゴンのための食事を用意してもらおうとした。
「ええ、オレンジかイチゴになるけど?」
 俺は 鞄のを開けエンペランサを出してやった。
「どっちがいい?」
「イチゴを沢山!」
 どうもこのドラゴンはなんでも食べるものの、果物が好きなようだ。
「まあ、小さなトカゲがしゃべってる!」
 すばやい反応をしたエンペランサは反論した。
「アタシはトカゲじゃないわよ! ドラゴンよ! 失礼ね。けど、ナタリーはブレスくんの大事な人だから許してあげる。イチゴ沢山お願い!」
 コクトーはめずらしいものを見るように、ジーッと眼鏡を上下させながら見入っていた。
「かわいい子ね」
 一丁前にテーブルの上で堂々と陣取っているドラゴンに目を向けるが、かわいいとは思えなかった……
「そうか??」
「少し待っててね」
 ナタリーが離れていった後コクトーがドラゴンから目を離さず聞いてきた。
「で? どうしてこんな小さいドラゴンがお前と一緒にいるんだ??」
 俺はリットちゃんと出会い、ババーに会ったことを言い、エンペランサの強引に出会ったことを話した。俺が実は竜人族で、今はその種族がなぜかいないこと、すべてを打ち明けた。俺が騎士には向いていないらしいことも……
 俺の話しが終わるのは食 事も終わり、おやじやナタリーが休憩時間になり、俺達の隣の席で食事をとり、終わるころだった。
「で、これからどうすんだい??」
 そう言ったのはおやじだった。
「たしかにそうね。なんだか信じられないけど、ブレスがそういう事になったことは神の思し召しなのよ。おばあさんのことも気になるし、今はいなくなってしまったブレスと同じ種族の人達がどうなったのか、なぜ、一人ブレスがここにいるのか? 謎だらけね」
「竜人族か……聞いたこともないな〜。図書館に行っても封印されているのなら、資料はないと思う。だからまず、封印の解き方とか、ドラゴンマスターのこととか世界の知識が集まるアスリースのアカデミー行ってみたらどうだ?? あそこには世界の偉人が集まってると言うし」
「そうだな。確かにいいかもしれないな。この機会にブレスが失った過去を探しに行くのがいいかもしれないな。アスリースにヒントがあるかもしれない」
「そうよ! ラジアハンドでは、私や、この人や、コクトーで調べてみるから」
 俺は全てを打ち明けてよかったと思った。大事な人達だとは思っていたが、ここまで協力してくれるとは思わなかったからだ 。真剣に話し合ってくれた。俺はその真剣さに答えなくてはいけないだろう。
 エンペランサがこっちをずっと見ていた。柔らかい笑みをこぼしていた。
「ありがとう。これから、アスリースに行くことにする」
 みんなが頷いていた。よしっそうと決まればすぐに行動を起こそう。
「だったら、あたし船に乗りたい。船に乗ったことないんだもん」
 俺も船には乗ったことはなかった。
「いいかもしれないな。ロポポから定期便がでてるんじゃないか?」
 コクトーが言った。それもいいかもしれない。そうしよう。
「ああ、そうしてみる」
 俺は席を立ち出かけるかとにした。俺の荷物はこの鞄ひとつだけだ。
「コクトー宿代はリットちゃん分も付けといてくれ。あ……料理代は払わなきゃいけないな……」
 コクトーは何故宿代はよくて食事代はだめなのか、言いたそうにしている。
「水臭いこと言うな。飯代ぐらい、いらねーよ」
 おやじがそう言ってくれた。俺は精一杯の感謝の気持ちを言葉にした。
「ありがとう! じゃ、さっそく出かけるよ」
 そう言って俺は照れくさい気持ちを押さえるために急いで店を出た。エンペランサ も後に付いてきた。
「良い人じゃない」
「まあな」
 俺は自慢げに頷いてみせた。街の出て城壁も離れたころエンペランサが大きい飛竜になった。
「今日はいいもの見せてもらったし、船に早く乗りたいし、サービスしてあげる。背中に乗って頂戴。しっかり掴まっててよ?」
 夕日に燃える空にエンペランサは飛びだった。風にのり、鳥たちと共に風を切った。
 初めての感覚に俺も翼があることに興奮し、チャンスがあれば、自分で飛んでみようとおもった。
 ロポポの港の手前で降り辺りはもう暗くなっていた。さっそく船のことを調べることにした。
「は?? このごろ定期便だしてないって!??」
 今度は1週間後??? 俺は頭にきてそこの親父をおもいっきり睨みつけてやった。しかし、その効果はなく渋々そのチケットを買うことにした。それからの俺とエンペランサは港に行っては船を羨望の眼差しで見つめることしか出来なかった。何日かたつと俺が滞在していた宿に小さな14,5歳の女の子が一人でやってきて尊大な態度で、部屋を取っていた。えらく御機嫌斜めのようだった。宿の親父が不信に思い聞いていた。
「お嬢さん、お父さん とお母さんは?」
 その子は怒鳴り返した。
「いない!! 文句があるならお金を返せ!! 別をあたる!」
 ……すごい……。俺は触らぬ神に祟り無しと言うことわざを思い出し、目を合わせないように、部屋に入ることにした。

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