ぽん。
肩が叩かれた。
「っっ!」
凍る全身、青ざめる顔面、失神直前まですっ飛ぶ意識。
やばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばいやばい……
頭が真っ白になり、これ以上のことが考えられない。
絶体絶命。
そんな時、後ろのそいつはこう言った。
「セザールさん? どうしたんだい。帰ってたんなら声ぐらい掛けなさいよ。誰かと思ったじゃないか」
「へ?!」
びくっ、とけいれんでもするように振り向くとそこには、この宿の女将さんが眉をひそめて立っていた。
頭のどこかがぷつんと鳴って、頭のてっぺんから何かがするりと抜けてった。
「……なんだって。一体どういう事なんだ」
しばらく経って落ち着いた俺は女将さんと、宿に泊まっていた人たちがいる、宿の地下倉に下りた。
そこで、今までのいきさつを話してもらっていた。
「こっちだって、さっぱりだね。とても普通とは思えないよ」
「確かになぁ、そりゃおかしい」
こういうことだったようだ。
昨日、俺が宿を出てから半日ほど経って、奴らがいつの間にかここを取り囲んでいたのに気が付いた。
それからからはあっという間で、あれよあれよと騒いでいる間に警護隊の詰所や役所などの要所を抑えられてしまった。
住民たちは家に押し込められ、抵抗するものには危害を加えた。
そして、こんな風に落ち着いた。
一つ、おかしい事があった。殺された者が未だにいないのだ。
「けど、俺さっき殺されかけたぞ。あれはマジだった」
「……じゃあ、外から来た人は殺すってことね」
考えてみる。
町を占領して、機能を麻痺させる。それから、ここにノコノコやってきた奴を喰っちまう、もとい、殺してしまう。
なんだか、クモみたいな奴らだ。
「なーんだかね。何がしたいのか分からん。そもそも、あいつらに名前ってあるのか」
脅威の高い盗賊団にはたいてい呼び名があるものだ。
「名前? うーん、どうだろうねえ。ここらへんはあーゆー奴ら少なかったから。詰所に行けば判ると思うよ」
行ければいいが、たぶんここを出ると同時に囲まれてしまうのオチだ。
だいたい、警護隊が機能しているとは思えない。
「外が、静かになったようだね」
女将さんがぽつりと言った。俺にはよく分らなかった。
「……反抗が、失敗したんだろ」
倉の中が静まり返った。