その日のずいぶん早い夕食の席で、フォルクスは切り出した。
もう定期船の出港の日が近い、と。
「そうか、もうそんなにたったのか」
「はい。明日、準備ができ次第レクサへ向かいます」
「そうか。……すまないけど、俺はここでお別れだな」
俺は言った。
フォルクスは「えっ?」と声を出して手を止めた。
リオは顔を上げたが、それだけだ。
「俺も、いろいろあってな。ちょっとばかり、ここでやっとかなきゃなんないんだ」
「……そうですか」
フォルクスは食事を再開する。
「まあ、見送りはしてやろう。ハワードさんから馬車を借りてやるから」
「それは助かります」
思っていたより暗い雰囲気にはならないのでほっとした。
これだけいろんなことを潜り抜け来たのだから、まあ当然のことだろう。
そして、取り止めの無い話をしながら食事を終えた。
フォルクスたちにちょっと送れて部屋に戻ると、二人は既に荷物のまとめを始めていた。その様子を、壁を背に座って見る。
思ってみれば、このほんの数十日の間で俺が数年かけて体験する事が瞬く間に過ぎ去ってしまった。ずいぶん、酷い目に遭ったものだと思うが、これ以上ないくらい楽しい時間だった。このままこいつらと旅を続ければ、もっと面白いものに出会えるかもしれない。しかし、それはしてはならないと思う。俺はこれ以上こいつらの運命に関わってはならない、という感じが纏わりついて離れないのだ。
俺は、一人ぶんぶんと首を振った。なんか変なことを考えている自分に気がついたからだった。
その時、俺の頭の隅に何か引っかかるものがあった。それが何か、俺はすぐに気がついた。
「しまった!」
俺はいきなり大声をあげ、立ち上がった。
元々少なかった荷物をあらかたまとめ終えていた二人は同時に振りかえる。
「ど、どうしたんですか」
フォルクスがちょっと引き気味に聞く。
「別れの宴がまだじゃないかっ! 今なら間に合う。すぐ行こう!」
「え、え、だってさっき夕食を食べ終えたばかりじゃないですか」
「安心しろ、夜はこれからだ。この町の夜も長いし、良い酒場を知ってる。さあ、行こう行こう!」
嫌がる二人を酒場へ強制連行。長く騒がしい夜が始まった。