ファンタジア

リオ14

第十四章       大切なこと

「……おい。飯食わないのか?」
 セザールの問いに、リオはハッとなった。
 ―――また……昔を思い出していた……
 リオは父の危篤を知らさせてからずっと、情緒不安定だった。
 もちろん、そんなことは表に出さない。だが、勘のいい人なら微かに気付く程度にリオの表情はとても不安定であった。
「……外にいってくる」
 リオは差し出されたご飯に手もつけず、外に出た。
 風が、髪を優しく撫でてくれる。キラリと、青い小さなピアスが光った。
「……なんだお前。いつも暗いな」
 来たのはフォルクスではなく、セザールだった。
「……放っといて」
「放っときたいのはやまやまだが、そう暗い顔をいつもされてると気になるじゃないか」
「好奇心?」
 リオは軽蔑の眼差しでセザールを見つめた。
「ひねくれたお姫さんには、そう映るんだろうよ」
 セザールも、しらけた様子で答えた。
 風が、ふと止んだ。セザールが言った。
「……お前、父親好きか?」
「…………」
「ハハハ。馬鹿な質問だったな。好きなら、とっくに帰ってるか」
「…………」
 リオは黙ってセザールの話を聞いていた。
「もう帰れとは言わないけどよ、後で後悔するぐらいなら今行っとけば」
「……わかってる」
「そうか」
「でも今は、それより大切なことが……あるから」
「なんだそれは?」
「……言わない」
「秘密主義か?」
「……そうね」
 また風が吹き始める。
 不安になりそうな日は、いつも誰か側にいてくれるなぁと、リオは思った。
「帰るか」
「……一人で?」
「お前もだ」
「……わかった」
 二人は立ち上がってフォルクスのところへ帰った。

 ―――何より大切なことが、今ここにある。

©ファンタジア