「作業は完了したということで。うーん、完璧♪」
「…………」
「ひっでぇ、引くなよそこで」
「……うるさいわい、まったく」
「あんたのいつもよりはよかでしょう、って思ってんだけどなー。ま、いいか。今日はめでたき日だしな」
「浮かれてばかりいるな。お前が思うほどに単純には進んでくれはせんだろう、あの二人にも動きがあったと聞いたぞ」
「――情報早いな、まだまだ現役だねー。……怒るなよ年寄りが。わかってるって、紅と蒼は確かにこのところ、ちと活発だがね。すーぐにつなげて考えるのはどうかと思うぞ、俺っちは」
「お前が言うところの作業も奴らがしたのだろう? それだけの力を持ってる二人が何も考えん、と思うこと自体が危険だろうが」
「……知ってんだろ? どうせ。だったらわざわざ俺っちから言いたくはねぇよなー」
「強制観念」
「うわ直接的」
「それは驚くほどの事ではないが、事実としては危険過ぎる。奴らが考えるのだぞ。考えて自分で動くのだ。公然と」
「そーだよなー。公然と、ってのは問題かもなー。単体としては強すぎんもんなー。さしずめ動く一部隊ってとこだよなー」
「動かぬ一部隊じゃ怖くはなかろう。よく動くのが怖いの。疑う動きはないが……あの盆暗に従ってるとも考えられん」
「ま、そりゃそうだ。そうだったら俺寄越したりはしないだろうさ。解ってやってんだろうよ。少なくとも紅の奴は」
「蒼とて馬鹿ではない。むしろやることが解る分紅よりも恐ろしいくらいだ」
「今それを言ってても意味はないだろ? どうしたいあんたらしくないぞ。焦ってんのか、天下のデーレ=ドゥクスト様が」
「む、らしくはないかもな。すまんの。お前などに話しすぎている」
「やな爺だ。――で、もし奴らが敵対するようだったらどうすんだ?」
「…………少し考える。黙ってろ」
「……ムカ。剣とはラージバル全域に存在する最も有名な武器の一つであり、代名詞的な使われ方もするまず知らない者などいない有名すぎる代物であーる。であると何故にそんなに剣は広大な大陸に広まっているのであろうか。それもそのほとんどを形状さえも変えずに。答えは簡単。太古――んまぁテーヴァが鎖国する前でエルフのジジイも今じゃぁ生きてる奴はいないだろう前に、大陸でそういうもんが人為的に流通されたからではなかろうか、ということ。かみ砕きまくるとだねぇ、どっかの物好きか野望がでかすぎる商人かそれともその野望を達成した覇王が『剣』という武器――じゃねぇかもしらんが――を宣伝しまくった、というわけ♪」
「だぁとれ」
「…………ムカムカ。この俺っちを頭ごなしに黙らせるのをどんなに難しいか試してやろうかと、とあるすっげぇ機関に申請中。答えは能動的に可能。うはははは。恐れ喚け叫べ慄けぇぇぇぇ。今こそ我らが大魔王べんどろでーに=あんまらとんてすらんかまるーが御光臨のときである―。どんてけどんてけどんてけどんてけどんてけどんてけちーん。おぉぉぉ、あのイカでタコでネコでトムソンガゼルでマンティコアでケツアルコアトルでハイヘカトンケイレスな御方がべんころにー=まんたくすれいにー様に違いないー」
「五月蝿い(うるさい)」
「一言で切って捨てんなよ。せっかく俺っちともあろー者が場を和ませるという偉業を成してんのに」
「お前には宮廷道化が出来ないことはわかったわい。いい加減にせい。ったくどこぞの娘に似てるの、主は」
「ん? なんか俺っちの存在意義をけなされた気がしたが――気のせいだよな、うん。で、だ。決まったのかい?」
「――決めたわい。あの二人が敵対したとしても容赦などせん、出来るか。わしが、勝つ」
「ほー、勝つ、かい? 勝てるのかいね? あいつらに」
「勝つ、と言っておろうが」
「ま、いいけどな。――話変えるぞ。とりあえず槍術衆潰したりしたが、動きは調べんでいいのか? あんたの草ごときじゃ情報の密度が違うだろ」
「自分で訊いといて変えるな。――たく、あの娘にそっくりだ。で、なんだと? 侮辱か? 屈辱か?」
「違うだろ、落ち着け爺。実際だよ。俺っちも見つけられんのだからどうかなー」
「お前を見つけられるもんなぞ、期待しとらんわい。まぁ、次は討伐隊でも来るだろうから、ほれ。お前さんがやればいい」
「――真面目に考えてるか?」
「――お前にそう言われると傷つくぞ、わしは」
「……うん、まぁそうだな。あの二人には隠しとけよ。あんたの草じゃそんな大それたことできねぇからな」
「――何でわしがお前に諭されとるんだ? ん? ん? 釈然とせんのー」
「うん♪ ちゃんと草には黙ってるんだぞー」
「屈辱的だな。むぅ、高名な者がおったら殺すな。使える時もある。分かったの? ザンク」
「お。名前呼んだな、久しぶりに」
「さっさと行け、いくら奴等とて衆の一つを壊滅させられては黙ってはおらんぞ。ザンク。ザンクィトクス=オルステッド=シャープネス」
「追い出してやがるな……分かった分かった、分かったからその凶悪なトゲトゲハルバートはやめろー」
「ふむ、行ったか。異国の鬼よ……」