結局リョウルクは篭手と具足、合成弓に奇形槍、さらには厚い外套(がいとう)と頑丈な背嚢(はいのう−リュック)を手に入れた。一応以上のものではないが代金は山犬の毛皮となった。
流石(さすが)は在村漸の目利きと言うべきか全てが自分に合った、自分の技術を活かす装備となっている。
――長い一日の終わり。
大通り脇の指して大きくも小さくも無い宿に無償で泊まることとなったリョウルクは、槍と篭手、具足を取って通りに出た。宿の若い主人が無理に呑ませた酒がくすぶっていて寝付けそうにも無かった。人間にとっては潰れる量であったが。
誰一人いない。昼間とは正反対の静かな、物淋しい光景。
大通りは即ち城へと続く正通り、日の暮れた時分に客を集める店など無い。
リョウルクは少々冷えてきた街路をまっすぐに歩み、南門まで進んだ。距離はそうも無い、近場の門である。
南門は三人の衛士が微動だにせず立っていた。黒い壁にしか見えない内門は堅く閉じられている。
――昼間に開いていたのはここが正門だからか。
化生の一つで街の、城につづく門を閉じるわけにはいかないという訳であろう。北からの行商も心得たものでわざわざ南にまわって街に入る、と。
そんな事を考えて、リョウルクはきびすを返した。別に何の用があった訳でもない。
大通りから脇道に入る。適当に道筋を覚えながら歩を進めると開けた空間に出くわした。昼は小さな市でも開かれているのだろう。十字に道の交わった広場である。
――ちょうどいい、か。
具足と篭手を締め直し、槍を左手に持ち、構える。
槍は質量は大きく重量は軽い。
先端は巨大な刃が三枚連なって一つの刀身を創っており、石突にも簡単な刃がついている。その両端の重さの釣り合いのため振りまわす分には、軽い。逆に止めると重い。だがその重さも刃の尋常でない体積からしてみれば、異常なほどの軽さである。一体どのような素材が使われているのか、その刀身は金属の冷たささえ感じさせない。
――魔法ってのか。
振るう。
右方から左へ、水平に。その慣性に逆らわず己も回り石突を旋回させ、もう一薙ぎ。
止まらない。
上への力を加え逆袈裟気味に振り上げ、背を通して右に持ち替え逆手で斬り下げ左でつかみ前動作を省略した石突での刺突。槍を手放し跳躍して宙にあるそれを両の手で取り、体重の乗った斬り落とし。
刃は止まらず、わずかに乾いた地面を切り裂いた。
――ちと重い、か。
片手で持ち上げる。
「――?」
明るい。
微かな光源が、ある。
斬られた地が淡く緑がかった光をにじませている。
強弱のある細いその光は数瞬と置かず、消えた。
錯覚?
違う。光の残滓(ざんし)が弱い眼に焼き付いている。
――やはり魔法?
奇形槍を見る。
リョウルクには新たな得物がうっすらと輝いているように見えた。
二日の後――
六の者達が南へと旅立った。
始まり、だった。