「これがレージラールの像か、見るのは初めてだな」
夜、目の前に広がる星の見えない暗闇の空間でルンドは、ひとりでに柔らかい光を放つ、異国の女性をかたどった神秘的な像と向き合っていた。
ラジアハンド城から北西に半日ほど行った所に、ラジアハンドの者でもあまり知らない名も無き洞窟があった。
そこに代々王家に伝わるレージラールの像が深部に安置されているらしい、という不確かなグレッタからの情報を頼りにして、ルンドはそこに来ていたのだった。
「そんな物があるなら港で船に乗るより早く移動出来ると思って、半信半疑で来てみたが……どうやらグレッタのうろ覚えは確かだったみたいだな」
レージラールの像とは、魔法レージラールの効果を持った世界に一つしかないといわれている像で、これに手を触れた者は一瞬にして長距離移動が可能になるというビショップの国ならではの石像だった。
しかしなぜこんな物がこの洞窟にあるのか未だに分かっておらず、この人物のモデルも分かっていないらしい。(グレッタ談)
「たしか手をあわせるんだったな」
グレッタに言われていた通りに石像が差し延べている手に触れたその時、ルンドは石像には絶対に無いもの、つまり体温を感じ取った。
(この石像、生きているのか!?)
驚いて反射的に手を離そうとした時ルンドは急にとてつもなく強い力で引っ張られるような感覚を覚えた。
それこそが魔法レージラール特有の感覚だったとルンドは後で知ることになるだろう。
そう、人はもとより彼さえ知らないこの魔法の行き先で……