〜話は少し戻る〜
自己中心的な男女二人の思いつきの行動によってコロシアムに出場し続けることを断念せざるを得なくなってしまったルンド。
街から少し離れた人気のない原っぱの様な所で三人は来ると早速一人は傍観に、二人は戦いを始めた。
ルンドとジュウマ、二人の戦いは『戦い』というよりむしろ『勉強』に近いもので、手合わせの最中にお互いが見つけた相手の弱点を言い合いそれに気を付けながら再び爪と刃を交えていくということを延々と一晩
眠らずに続けた。
2〜3回ほど入れた休憩時間ではジュウマに自分が今までに学んだ戦法をジュウマの体格、武器に合わせて選び聞かせてやった。
ジュウマはそうでもなかったが、ルンドはこういう手合わせは久しぶりらしくコロシアムを自己判断で棄権してしまった罪悪感をひしひしと感じつつも、何か垢抜けたようなそんな表情をしていた。
とても短い間だったが、双方のこれから直すべき問題を見つけることが出来たのはかなりの収穫になっただろう、ジュウマを熨(の)した『ガロン』と言う人物と戦う時になってこの僅かな時間に学んだことが少しでも役に立ってくれればいいとルンドは思った。
それから日も昇る頃になってようやくジュウマの気も収まり、解放されたのだった。
「ではこれで失礼します」
「じゃあな、今度またやろう」
素っ気ない二人の別れの言葉にクレオは不思議そうな表情を浮かべていたが、そんなもんなのね男って、と、呟き一人納得するとルンドの方に顔を向けた。
「結局朝になっちゃったけど、どうせあの子に謝りに行くんでしょう?
あたしもちょっと悪かったかなあと(今更だけど)思ってるから一緒に謝ってあげようか?
一人より二人の方がちょっとは救われるんじゃない?」
ルンドの事だから彼が口を開いて言う内容は数年間のつき合いで分かっていた筈だったが、このまま『じゃあね』で別れるには少しだけ彼女には忍びなかった。
数年ぶりの再会という事もあり、手合わせの一回位しておきたかったが、これ以上迷惑をかけちゃいけないかな、と、その言葉を口にするのをグッと堪えながら。
「いえ、ジュウマさんとの手合わせを決めた最後の決断は私の意思なのでそれには及びません」
自分の意志で決めたことは必ず責任を持ってやり抜き、それによって生じた事態の責任も自分が全て負う。
当り前のことだがルンドが言うと……なんだかなあ、と思う。
その何か言葉にならない考えを払いのけるとクレオも二人に習って別れの言葉はあっさりとしたものを選んだ。
「そう……じゃあね!」
そうして三人はそれぞれ思い思いの道へ帰て行ったのだった。
「レイチェル様、只今帰りました」
レイチェルはルンドの帰りが遅かった理由を聞くと予想通り相当不機嫌になった。
しかし機嫌を取り直すと、それをネタに自分のコロシアム出場を許可しろと迫った。
勿論最初は危険なため断固反対したが、結局レイチェルの方が舌好調で、まんまと言いくるめられてしまった。
後で思い返してみると、初めの不機嫌な様子は芝居だったかもしれない。
そんなこんなで話が終わる頃にドアをノックする音が聞こえ、ルンドがドアを開けるとそこにはアルフェリアが居た。
雰囲気が明らかに違っていたので久々によく知る人と会えて嬉しかったのだろうと思い、余計な詮索はせずにおいた。
それからコロシアムの話題に移り、ルンドはアルフェリアとルークが参加していた事に驚いていたが、それ以上にアルフェリアはルンドが試合を途中棄権した事に驚いた。
「ふーん、そうだったんだ……じゃあもしルークが優勝できたらオルドランって言う人に宝刀のことを頼んで貰うように言ってみるよ、でもレイチェル様がいるんじゃその必要もないかもね!」
やけに上機嫌なアルフェリアはそう言うと、またルークがいる宿の方へ帰るために部屋を後にしようとした。
途端に部屋に文字通り割って入ってきた細い棒状の何かがあった。
ルンドはクォートを素早く抜くとそれの動きを即座に殺し、矢であることを再確認した。
驚くレイチェルとアルフェリア。
ルンドは矢が目指していた標的を見た、標的にされた方もルンドを見やった。
標的は……なんとアルフェリアだった。
「もしかしてレイチェルさんがラジアハンド城を留守にしてるって知られちゃったとか……?」
アルフェリアは標的が自分であったとは分からなかったらしかった。
割れた窓の向こうを見やるが辺りはもう暗く、矢を射った人物がいたとしても姿は見えない。
「今は帰らない方がいいかも知れません」
余計な不安は持たせない方がいい、そう思いルンドはそれだけアルフェリアに言った。