ファンタジア

レイチェル28

「ルンド……アルフェリアさんを……」
 レイチェルは静かな口調で言う。
 言いながら窓の外を慎重に覗くとそこにはなんの人影すら見当たらなかった。

「速い……ですわね」
「ええ、忍者の類でしょうか……?」
「やっぱりレイチェルさん狙いで?」
 アルフェリアが少し不安そうに問うが、レイチェルはいたって普通に言い返した。
「ええ、そのようですわね〜! けど、大丈夫ですわ! アルフェリアさん、悪いのですが今日はここの宿に泊まっていただけません?」
「えっ??」
「レ、レイチェル様!?」
 ルンドが困惑した表情でレイチェルを見ると、レイチェルはすぐさまルンドを廊下へと連れ出した。
「いいこと、どうやらアルフェリアさんは私が狙われたと思っているようですから余計な心配はしてほしくありませんの! ここは私とルンドがアルフェリアさんを守ってアルフェリアさんに魔法部門で優勝してもらう事にしましょう」
「レイチェル様はいいのですか? ……出ないで……?」
「ええ、だって……やっぱり面白くないんですもの〜!」
「はぁ……」
 にこやかなレイチェルの笑顔に思わすルンドは呆れた溜息をついてしまった。
 しかし、レイチェルが言ったのは口実にすぎない。
 本当はアルフェリアとの戦いを避けてか……
 それとも……?

「とにかく! 狙われているのがアルフェリアさんだって事は内緒ですわよ!!」
「はい。レイチェル様がそうするなら」
「よし! でわルンドには周辺の見回りをしてきて欲しいの〜! よろしいかしら?」
「そんな事なら……でも私がいない間、またややこしい事を起こさないでくださいよ!」
「ええ。いってらっしゃ〜い〜!」

 そうしてルンドは宿の周りを注意深く見回ることになった。
 ルークの所に寄ってアルフェリアが今日は戻らない事も伝えた。もちろん、狙われているとは言わなかったが……。

「それじゃあ、アルフェリアさんは私と同じ部屋でいいですわね〜!」
「ええっ!! ぼ、僕はルンドさんの部屋でっ!!」
「アラ? 大丈夫ですわ〜それに私は狙われているのですよ〜。こんな私を一人にしておいていいんですの〜?」
「うっ……それは……」
「まあ、夜までに犯人が捕まるといいんですけどね〜」
 ルンドが出かけてしまった為、レイチェルと二人きりになってしまったアルフェリアは冷や汗をかきながらルンドが速く帰ってくる事を願っていた。

「(ホント……速く捕まるといいんですけどね〜)」
 白昼堂々の襲撃にレイチェルは疲れまじりの溜息をついた。

©ファンタジア