レイチェルが去った後、ルークはなんとはなしに窓の外を見つめた。
街の通りの向こうに歩いていくレイチェルの姿が見えた。
そしてそれから数分後、こちらに向かってくるアルの姿が見えた。
パタパタと賑やかな足音とともに勢いよく扉が開く。
「ただいまーっ……。あれ? レイチェルさんは?」
アルはきょろきょろと部屋を見まわしながら問いかけてきた。
「なんか用事があるんだってさ。伝言預かってる」
そうして、ルークは先ほどレイチェルから聞いた宿と住所を伝えた。
アルはちょっと視線を宙に漂わせて聞いた住所を復唱し、それからすぐ外に向かってしまった。
レイチェルのところに行ってくると言う言葉を残して。
宿を出たアルフェリアは住所と名前を頼りにレイチェルたちがいるはずの宿を探した。
とりあえず自分の目でその場所を見ておかないことには落ちつかなかったのだ。
「あ、みーっけっ!」
何人かの通りすがりの人を捕まえて道を聞きながらではあったがその宿にたどり着くことが出来た。
すでに太陽は西の空に沈みかけており、ちょっと話したらすぐに戻らねばならないだろう。
扉をノックするとすぐに中から開かれた。扉を開いてくれたのはルンドだった。
「こんにちわ〜っ、この前はごめんね。いきなりいなくなっちゃって」
まったく反省のカケラも見えない無邪気な笑みに、ルンドが不思議そうな顔をした。
「いや、それはいいのだが……。ルークにはあえたのか?」
「うんっ!」
ルンドの問いにアルフェリアは満面の笑みとともに頷く。
「まぁ、アルフェリアさん〜。早速来たんですのね〜」
奥のベッドに腰掛けていたレイチェルも声をかけてくれる。アルフェリアはレイチェルの言葉に答えるために、再度頷いた。
それからとりあえずお互いの状況――といってもコロシアムのことしか話すことはないのだが。――を話して、そろそろルークのところに戻ろうと思ったときだ。
派手な音と共にガラスの破片が部屋に散らばった。
同時に窓から何かが飛び込んでくる。ルンドの行動は早かった。剣を抜き、飛びこんできた何かを斬りつけたのだ。
カランという乾いた音が床に響いた。
ルンドはさっと床に落ちたそれを拾い上げる。
「弓矢……。一体誰が……?」
外は暗く、誰がこれを放ったかなど判断のしようがなかった。
「もしかしてレイチェルさんがラジアハンド城を留守にしてるって知られちゃったとか……?」
アルフェリアは半ば呆然と呟いた。
二人とも偽名を使っているとはいえ、ルンドはともかくレイチェルはコロシアムでしっかり顔を出している。しかも前回の出奔事件でレイチェルの顔を知っている人間は以前と比べればかなり増えているだろう。
二人は顔を見合わせて、それからもう一度、ガラスの割れた窓を見つめた。そしてその向こうの窓の外を。