第八章 アストとの別れ
「そう……」
フォルクスからすべての話を聞いたリオが、静かに頷く。
とりあえずアストがいなくなって満足しているようだ。
差し出された焼きたてのパンにも手をつけず、リオはそのままボ〜としていた。
フォルクスは、きっと自分を心配してずっとそばについていてくれたのだろう。
そんなことをずっと考えていた。
「食べないのか? お姫さん」
「ん…。リオでいい」
「へ」
「リオって呼んでも…もう構わないから」
「はぁ…」
フォルクスは複雑な表情をあらわにした。リオが少しずつ心を開いた瞬間であったが、フォルクスはそれに対してあまり興味を持たなかった。
「これから俺らどうする?」
「…そうね…」
しばらく二人は考え込んでいた。
「とりあえず、街に出るか?」
「………」
黙って頷いた。
階段を下りながら、フォルクスが言った。
「何も言わないのな…。さっきのこと」
その一言でリオはすべてを察した。
リオが目を開けた時のフォルクスの顔は、普通の人間なら悲鳴をあげる程恐ろしい顔なのだろう。
しかしリオは特に表情も変えずフォルクスと喋っている。
「別に…。大した事じゃないでしょ」
リオがきっぱりあっさりそう言うと、フォルクスは躊躇いがちに首を縦にふった。
「そ、そうか。大した事じゃないのか…」
そのまま静かに歩くと、街に出た。
「あ…あいつ…」
フォルクスに何やら見覚えのある人物が、街の中に立っていた。