ファンタジア

リオ18

第十八章    私のとなり


  「だけど、迷惑とか、甘えてるとか、そういうのだったら、違う。逆なんだよ」
  「独り旅より誰かと旅をしたいと、思ってた。その“誰か”はずっとあんたなんだと、勝手に思い込みはじめてて、あんたの目的も事情もろくに聞かずに、引きずり回しちまったもんな」

  ―――「嫌になったんだったら、それでいい」

  違う。嫌になったわけじゃない。
  私は……
「気になりだしたらこの見た目が気持ち悪いってのはよくわかるし、まともな感覚だ。
  そうじゃなくても万人受けするような器用な性格じゃないのも、自分でちゃんと知ってる。だけど……」

  違う。気持ち悪くなんて、そんなこと思ってない。
  それがまともな感覚なら、私は多分まともじゃない。

  そんな意識が混乱する中、リオはうっすら目を開けた。
「嘲笑うか?」
  フォルクスの声に、ぴくんとなる。
「嘲笑うよな。結局、俺は独りじゃ、自分が生きてていいかすら判らないんだ。
 ただ在るだけのおまえらがうらやましいってのは――ただのひがみ根性なんだろうな」
  そうか。
  この人は、私と同じだったんだ……
  あまりに自分と似すぎていてわからなくなっていた、そんな気がした。
「お、起きたのか?」
  ゆっくりと身体を起こしたリオにフォルクスは言葉を向ける。
「……」
「気分はどうだ」
「……頭が痛い」
「それは二日酔いだ」
  リオは苦笑するフォルクスを黙って見つめた。
「昨日は、ごめん」
  リオが謝る。
「あ?」
「もうあんなこと、言わないから」
「あ、ああ……」
  リオは少し俯いて、そして顔をあげる。
「ありがとう、答えてくれて」
  そう言ったリオが、フォルクスには微笑んだように見えた。

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