「変装しましょ〜!」
嬉しそうにはしゃぐレイチェルとは裏腹に……ルンドは蒼白な顔つきで、その……レイチェルが数々の服の中から選んだ究極の一着を見やった。
真紅の朱が眩しく、豪華な金糸の刺繍も美しい……正真正銘……それは女物の服だった。
しかも……ご丁寧にびらびらのスカートまで着いたお姫様用……。
「レイチェル様……これは……」
「えっ……ルンド、もしかして……私の選んだ服がお気に召さなくて〜?」
「しかし……いくらなんでも……これでは」
ルンドの顔がさっきよりもさらに蒼白に歪む。
「嫌ならいいんですわよ〜v私も出場しますから〜v」
「それは駄目です!」
「だったら……着るのよ〜!」
この時ばかりはレイチェルの天使の微笑みも理不尽な悪魔の笑みに見える……。
そして、この後何回か二人の押し問答が続いた後……結局ルンドは蒼い長髪のかつらを被り、見習い兵士の着る鎧と言う格好になってしまった。
「長髪って言うと……フォルクスさんを思い出しますわ〜」
「…………」
ルンドは何とも言えないといった表情で全身を見回していた。
「さあさあ〜それじゃあルンドはこの紙を提出してきてちょうだい〜! 私もここの衣装いろいろ見てるから〜」
「はぁ……何処にも行かないでくださいよ!」
ルンドがそう言って慣れない格好に恥ずかしいのか?
小走りで受付まで行くのを見届けたレイチェルは胸元からもう一枚の紙を取り出した。
「ルンドも甘いわね〜私がこんな面白い事見逃すわけありませんわ〜!」
そう言ってレイチェルは意気揚々に参加用紙の記述を埋めていった。
「はい……『小鳥ちゃん』様ですね。これで受付が終了しました。
選手ナンバーは85番になります。第一試合はえーと……今日の深夜、11時30分からになります。時間内に現れない場合は棄権と見なされるので気を付けてくださいね」
忙しそうな受付嬢からナンバー番号と対戦表を受け取るとルンドは表を見ながらレイチェルの待つ衣装部屋へと向かっていた。
「あれ……この名前……」
ルンドは対戦表の名簿に懐かしい名前と見つけた。
「クレオ……あいつが?」
困惑した表情のルンドと登録を済ましたレイチェルが帰ってきたのは、ほぼ同時だった。
「あ……あらルンド速かったわねっ!」
「え……? ええ、けど魔法系模擬戦闘部門の方が人が少ないみたいですねやっぱり……」
「そっ……そうですわね〜〜……」
「私は今日の深夜に試合なんでレイチェル様は宿で寝ててくださいね、今夜は第一回予選ですが気が高ぶってるヤツも少なくありませんから」
「そうですわね……(私が出るのは早朝だし……うまくいったわv)」
「そう言えば、アルフェリアさんはどうしてるんでしょうかね?」
「宿の場所とかわかるかしら〜?」
「ああ、けど……友達の所に泊まってくるかもしれませんね」
「お城はずいぶんと退屈でしたでしょうからね〜いい気分転換ですわね」
「そうですね。さあ、宿に向かいましょう」
そう言って二人は宿へと向かっていった。
今夜は新月の蒼月……蒼月はまだ始ったばかりだった。