ファンタジア

レイチェル22

「それにしても……この国に……いえレイチェル様に喧嘩を売ろうとした者がまたいたのね」
「きっとレイチェル様が帰ってきたのを知らなかったのではないの?」
「それにしても……馬鹿な人よねぇー」

 そんなメイド達の井戸端会議が今や城中で巻起こっていた。
 そして、隣国のクラリアットにもこの噂は伝わろうとしていた。

 そんな中、レイチェル・ルンド・アルフェリアの三人は城の中の会議室でこれから開催される「舞会」についてレイチェルに強制的に付き合わされていた。
「――ですから〜在村の宝刀展に出品させてくれる剣士の皆様を探してきて欲しいのです〜!」
 レイチェルがにこやかな笑顔で言った。
 アルフェリアは他人事の様に……ルンドは溜息をつきながらそれを聞いている。
「幸い、ここにフォルクスさんから預かった宝刀の1つはありますわ〜最低3本は展示させて頂きたいの〜」
「で……残りの2本の持ち主は見つかっているのですか?」
「え〜〜と〜〜……」
「どうなんです? レイチェル様」
 ルンドが声を低くして言う。
「え〜……わかりませんわv」
「えっ……それじゃあ何処に行けばいいんですか?」
 アルフェリアが不安そうに聞くがレイチェルはいたってマイペースに言う。
「心配ありませんわ〜宝刀の持ち主はラジアハンドのセフィーダ、アスリースのテラ=ドラ、クラリアットのオルドラン、ストレシアのジェントって言う4人の方がいらっしゃいますもの!」
「しかたない……わかりました……行きましょう、しかしレイチェル様はここに居てくださいね」
「えええ〜! そんなのつまりませんわ〜私も行きます〜」
「駄目です!! レイチェル様は公務があるでしょう! それに今回みたいに何時、ふとどきものが現れるとも限りませんからね」
「……嫌ですわ〜私も行きます〜いいですわよね? アルフェリアさん?」
「え……ええ、レイチェルさんの好きに……すれば……」
 その途端、ルンドから激しい眼力を感じてアルフェリアはそれ以上言えなくなってしまった。
「まあ、いいですわよ。私一人でもいいのですから〜」
「はぁ……まったくしかたない方ですね……今回の事で暫く刺客も現れないでしょうから……でも! 余計な事は絶対しないでくださいね!!」
 ルンドはそう言うと険しい顔をしながら会議室から姿を消した。
「ル……ルンドさん怒っちゃったみたいですよ? いいんですか? レイチェルさん」
「大丈夫ですわ〜きっとうさばらしに今頃公務室で始末書さばきをしてますから〜」
「はぁ?」
「あっ……アルフェリアさんも一緒に行きましょうね〜。私の研究の成果も旅の途中で見てもらいたいですし……」
「えっ……僕もですか? まあ、いいですけど」

 こうして、在村の宝刀探しの旅が始ろうとしていた。

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