ラジアハンド王国=蒼の月
この月には毎年ラジアハンド主催の舞会が開かれる。
表向きは他国との交流……親睦会といった感じだが、その実体は……政治的取引がうずまく華やかな社交会とは裏腹の暗い暗黒の一面も持っている……たぶん。
「ここがアルフェリアさんの部屋ですわ」
庭から城の中に移動したアルフェリアはレイチェルの案内でラジアハンド城4階(最上階)の客室の1つをあてがわれた。
「こ……こんな所、良いのですか?」
豪華な装飾の施された部屋の中でレイチェルがただ笑っていた。
「お好きになさってください〜。それとも、こうゆう部屋はお嫌いかしら〜?」
「いえ……光栄です」
「そう。よかったわ〜なにかあったら私の名を呼んでね〜魔法で私に聞こえるようにしてありますから〜」
「遠聴の魔法……なんてありましたか?」
「えっ……これは……私の研究の1つなの〜ある特定の人物の名を呼ぶとその人を呼べる……って〜興味があったら今度私の研究室に来てみてね〜沢山研究してるものがあるの〜」
「は……はぁ……」
「それじゃあ、夕食に……また」
そう言うとレイチェルは扉を静かにしめてパタパタともう薄暗くなった廊下を駆けていった。
「魔法の研究なんて……やったことないな……」
レイチェルが出ていった扉を見やりながらそう呟いた。
アルフェリアの部屋から分かれるとレイチェルは久しぶりに礼拝堂に向かった。
礼拝堂に入るとすぐ、純白の天使像……
ラジアハンドを守っていると言われている神”ラミスサイヤ”の像が見えた。
どことなく……レイチェルに似ている……。
ただし、その顔は純白の淑女らしく凛としていて女神を思わせる気品がある。
そんな天使像と王と向き合っている
レイチェルを見比べてか……?
城の兵士や使用人達はレイチェルの事をラミスサイヤの化身とも言っていた。
そんな事などつゆ知らぬレイチェルもこの像は誰かに似ていると……日頃から思っていた。
「やはり……お母様に似てるのかしら〜?」
ぽつりとこぼした言葉にこの前戦ったエルフ達の事を思い出した。
「……あんな事言ったけど……お母様の事全部知ってるってわけじゃないんですわよね」
あの時言った言葉は自分の虚勢だって事もレイチェルはわかっているのだろう。
口に出すと途端に悲しくなった。
レイチェルはこの天使像が嫌いだ。
自分を悲しくさせるから。
感傷に浸ってしまうから。
いろいろあるが、やはり亡き母の事を思い出すからであった。