ファンタジア

レイチェル17

 ラジアハンド城……数日間だけしか離れていなかったのに何故かとても懐かしい感じがした。
 豪華とも質素とも言えない石造りの城はレイチェルにとって無表情な毎日を繰り返すだけの
場所だったが、今回の帰国ではその城も少し違って見えた。
いつも朝……朝日の光を浴びて起きるベッドのそばの椅子の上に祭司をするための正装着がきちんと置かれている。

 レージラールで戻ってきた後、ルンドは始末書……
 アルフェリアは城の食堂に行ってしまったのであった。
 一人、王との謁見の間に通されたレイチェルはあの王との再開を果たした。

「レイチェル……心配したぞ! 今まで何をしていたのだ!」
 予想どおり、王は怒りを隠せない様だった……なにせ唯一の他国への対抗手段のビショップが失踪してしかもその事が各国に知れ渡ったのだから戦争ざたになっても仕方ない事でもあったのだ。
「レイチェル=ヴァレスト 第10代ビショップ……只今戻りました。」
「何をしていたのだ!」
「はっ……。ある方角から不穏な気を感じ取りその原因の追求の為に、お暇をいただきました」
「なにをたわけたことを! お前はそれがどういう事かわかっておるのか! お前はこの国を危機に陥れたも同然なのだぞ!」
「はい……罰は謹んでお受けいたします」
 王の怒りを逆なでするような凛とした口調に回りの上級兵士達やプリースト達ははらはらと二人を見守っていた。
「……本当にお前さんと言うヤツは……反抗ばかりしよる」
 その時、玉座の奥から腰の曲がった老人がこちらに向かってきた。
 王とレイチェル……他の人々までもその老人を注目する。
「ステンダー…卿……お戻りになられたのですか?」
 言ったのはレイチェル、その表情は驚愕を秘めている。
「久しぶりじゃな……レイチェル、その不穏な気……結局どうだったのじゃ?」
 老人はそのまま王の隣に来ると、その前で膝を折っているレイチェルに訊ねた。
「はい……結局、わからずじまいでしたが……それに値する事を知ることが出来ました」
「そうか……それはよかった、今までお前は外に出ることをした事がなかったからのぉ……一人でちゃんと暮らせるか心配だったのじゃよ……それに、母の事も……少しは知れたようじゃしな」
「ステンダー……? それはどういう事だ?」
「王よ……今回のレイチェルは、いわば有給休暇をもらったようなもんじゃ…罰は…そうじゃの……今度開催される……舞会の進行係りをやらせてはどうかの?」
「うーむ……舞会は大事な政治を決める大切なモノでもあるかなな……今まで一度も出席したことのないレイチェルにはいい薬になるかもしれん……わかった、そうしよう」
「王! お待ちください! それだけは……」
 レイチェルは立ち上がる王を必至に呼び止めようとしたがそれはステンダー卿によってかなわぬ事となってしまった。
「レイチェル……我慢せい……」
 ステンダー卿は笑みを含んだ声で言った。

 

 王がさった後、レイチェルはステンダー卿と共に自室に来ていた。
 服は、さっき椅子の上に置いてあった
 正装用の白い祭司服を着ている。
 王の謁見が終わってもルンドは始末書……
 アルフェリアは見当たらなかったのでレイチェルはステンダー卿と自室に来たのである。
「しかし、いきなり消えたとは……流石のわしも驚いたぞ!」
「そうですか〜? その割にはさっき平然としてましたよ〜」
 口調は普段のおっとりした口調だがステンダー卿とレイチェルは古くからの知り合いなので今更驚く事もなかった。
「舞会の準備も出来てきた事だし……お前さんもいい加減、身を固めてはどうじゃ?」
「あ〜! 分かりましたよ〜さっきなんで私の罰をそれにしたのか! もしかして、今回の舞会の進行係りって……アーリンさんなんじゃないですか〜? 自分の大事な跡取りにこんなイベントで悪い虫が着かないように……あえて私にしたんですね〜!」
「ほほほ……バレたか……」
「も〜私は絶対あんな社交界会場なんかに出たくなかったのに……これだったらまだモンスター達の制圧とかに派遣されたかった〜!」
「いやいや……それはないじゃろ? 王が王だからの〜」
「そうですね……これ以外の罰っていったら何だったんでしょうね〜あんなことや……こんなこと……うーん……」
 そう言いながらレイチェルは頭を押さえたよほど嫌な事が目白押しだったのだろう。
「まあまあ……これも仕事じゃ……ちゃんとやるのだぞ」
「わかってますよ〜けど、舞会……舞会かぁ〜あんなキラキラした世界は……向いてない気がするのです〜」
「そうかの〜お前さんだってちゃんと年ごろの女性の格好をすれば一発じゃと思うのだがのー」
「それが嫌なんですわ〜ルンドとどっか行こうかしら〜?」
「それは無理じゃろ」
 老人にあっけなく言われて少し落ちこんだレイチェルだった。

©ファンタジア