ファンタジア

レイチェル13

 2度目の爆音が深い森の奥から響きわたる……。
 放ったのはレイチェル・・相手にまったく手加減も無い大魔法は、今のレイチェルの感情をあらわにしていた……。

「うっ……なぜ、魔法が……」
 崩れるように地に伏せていく若いエルフ達は次々にそんな疑問の声を発していく……。
 そんな彼らを紅月の光を浴びながら冷酷な瞳でみやるレイチェルは、嘲りの念を込めながら言い放った。
「クスクス……馬鹿ね……環から離れれば魔力のわだかまりも薄れていったのよ……精霊が戻ってきたのもその証拠……
 もっとも、私には精霊は微かに感じる事しかできないのだけど……」
 さっきまでの冷酷そうでも、怒りや憎悪がある雰囲気ともまた違う……純粋な冷酷の笑みを浮かべたレイチェルは紅月の月光の下に倒れる彼らを見やりながら……静かに紅闇へと消え去った……。

 息も絶え絶えに老エルフがその場に着いた頃……
 その場は若いエルフの重傷者の山になっていた。
 それは森の精霊の加護で死者さえ出なかったものの……
 レイチェルの冷ややかなエレグラ族への復讐と自分に関わった報い言わんばかりの礼だった。
 老エルフはガクリと肩を下ろすと、嘲笑うかの様な沈みかけた紅月をいつまでも見つめていた。

 レブルの森・東北……レブルの森の南から入ってきたハズのレイチェルは、驚異的なスピードで移動していたらしい……
 森を抜けると、そこはストレシア特有の砂漠が見え隠れしていた。
「やっと……森を抜けましたのね〜」
 普段どおりの口調に戻ったレイチェルは間の抜けた声で壮大な砂漠と生い茂る森の狭間の中に立っていた。

 夜が明けてもなお……虹の光の収まらない石は爆風に吹き飛ばされた衝撃で割れかけていた。
 レイチェルはその石を大事そうに拾い上げると所々、最初の爆風で破れた法衣の袖の中にしまい込んだ。
 その顔は満面の笑みに満ちていた……。

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