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レイチェル12

 大きな爆音の後……レイチェルは焚き火からかなり離れた所まで爆風に吹き飛ばされていた。
 魔法が充満したこの森では、魔法を使えば逆に使った者が攻撃を食らってしまう……それを見込んで森のエルフ達はレイチェルに弓矢での攻撃を仕掛けてきたのだった。
 普段は冷静なレイチェルも、頭に血が上っていたからか……まんまとエルフ達の策にはまってしまったのである。
「……石が……」
 爆風に吹き飛ばされる時、落としてしまったあの不思議な石をレイチェルは傷付いた身体で探したが、いっこうに見つかる気配は無い……。
 紅月の月光があるとはいえ……暗闇で探すのは困難を極めた。
 そして、エルフ達がレイチェルに近づいてくる……。
「このままでは……」
 レイチェルは更に森の奥に進む……しかし!!
「いたぞ!! こっちだ!」
 エルフのまわりは速く、レイチェルはあっという間に森のエルフ達に囲まれてしまったのであった。

「もう、逃げられんぞ……レイチェル」
 エルフの老人が静かに言う……。
 レイチェルはこの情況に会っても、相手を睨み付ける事はやめなかった。
「その瞳……やはりルファリアに似ている、あんな事をしなければ……我がエレグラ族の長にさえなれた実力があったモノを……」
「……エレグラ族は次の長が居ないようだな、なるほど……わかった……何故、今ごろになって私をつけ回したのか……
 母の変わりに私をエレグラの長にする気なのね?」
 大胆にそう言うと、老人のまわりに居た若いエルフは老人を一斉に凝視する……。
 いくら力が強いからといって……ワースギュレイたるレイチェルを誰が大事な一族の長とするものか……と誰もが考え、老いたエルフを見ていた。
 しかし、老いたエルフが発した言葉は若いエルフ達を奈落の底に落とす様な言葉だった。

「そうだ……わしは彼女……ルファリアの娘であるレイチェルに我が一族の長として罪を償ってもらおうと考えておる」
 その言葉に近くに居た若い……男のエルフが口をはさむ。
「なっ……何故! こんなワースギュレイなどに我が一族を任されるのですか!!?」
 そのエルフの顔は蒼白だ。
 しかし、そんな言葉には耳も貸さない老エルフはなおもレイチェルを求めた。
「さあ、今こそ森へ帰るがよい……」
 しかし、レイチェルは老エルフに冷ややかな笑みを返す。
「私は……森では生きない」
「なに? ……エルフが森で生きないでどうするというのだ?」
「それは、弱い者の考え……私は森を必要としない……古いモノに固執するお前達には分からないさ」
「そうか……わしがこんなに言ってもわからんと言うのなら……ルファリアと同じ運命をたどってもらうしかないのか……」
 そう、老エルフはさっきと同じ様に右手を上げる。
「――――来る!」
 レイチェルがエルフ達の矢を避けるのは、まさに紙一重の技だった。
 さっきまでレイチェルが居た場所には何十本もの矢が地面に突き刺さっている。

 今度はレイチェルも攻撃魔法ではなく、防御魔法を唱える……
 しかし、これも時間が無く実験中のものだ……しかし、魔力が充満していることからどうやら上手くいったようだ。
 その証拠にレイチェルの細い足に突き刺さろうとした矢は触れる瞬間! 光に吸収されていた。
「……高位守護魔法……ガイアシールドか……それを教えたのもルファリアか?」
「母の魔法は全て私に受け継がれたと考えた方が身の為ですよ……」
「やはり惜しい……しかし、それと同様に……我が一族に仇なす一族……アルガータ族に渡ったら……それこそ恐ろしい」
「(精霊の動きが強まってきた? 環からかなり離れたから?)」
「我らの一族に仇をなすかもしれん存在は……もう充分じゃ」
 一人、呟くように言う老エルフにと環から離れるようにレイチェルはまた奥へと駆け出した。

「まて!! 皆、追うんだ!! 環から離れれば多少の魔法も使えるぞ!」
 若いエルフがレイチェルの背中を身ながら皆に訴えた。
 そして、老エルフが止めるのも振り払い……エルフ達は逃げる
 レイチェルを続々と追いかけたのだった。

 そして……また爆音が聞こえる……。
 残された不思議な石は紅月の月光を満遍なく浴びつくし……
 虹色の光を放っていた。

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