目指す洞窟はあまり目立たないところにあった。
関所からアスリースに続く洞窟を“洞窟”というのであれば、こちらは“洞穴”とでも言った方がよいかもしれない。
入り口は人が一人入れる程度の大きさしかなく、中からは湿った風が吹き出ている。
ボウっとした光が奥の方に見えるが、あれは何なんだろうか。
「ほら、到着したぜ……やっぱ不気味だよな……。
いいか、ヤバくなったらすぐに逃げるんだぞ。
こんな薄暗い中で奴らに囲まれて人生終えるなんてまっぴらだからな。
それからもう一度確認しておくが・・・おまえ、戦えるのか?
武器だけ持って安心してるヤツっているんだよな。
おまえはそうは見えないが、一応聞いておく。
……おまえは“何”ができる?」
いつになく慎重なデントの口調は、これから入ろうとするこの洞穴の危険さを表しているようだ。
「得意なのは刀での居合いですが、剣はだいたい使えます。
それから、少々のケガを治せるくらいの薬の知識を持っています」
「居合い、か……この中じゃあまり使えそうにないな……。
俺はほとんど攻撃できるような物を持ってないから、おまえの剣の腕だけが頼りだな……あぁ、また不安になってきたよ」
その言葉を聞いて少しムッと来た楽は同じ事を聞いてやり返す。
「あなたの得意なことは何なんですか?」
「俺か……俺は、その、なんだ……まぁ色々とな……」
デントにしてはあまりにも歯切れの悪いセリフだ。
そしてしばしの沈黙。
「……追々分かるさ……さぁ、行こう!」
急に出発を宣言したデントは洞穴への一歩を踏み出した。
慌てて楽も続く。
……結局うまくはぐらかされてしまった……。
洞穴の中はやはり湿っており、微かに風を感じる。
足音が響き、奥の方からはカサカサと何かが動く音が聞こえる。
入り口が遠くなってきたが、依然としてドラゴンフライは姿を現さない。
外から見えたぼやけた光はもうすでに消えていて、デントの持つたいまつの光だけが唯一の光となって洞穴を照らしている。
行けども行けども確かめられるのは、湿った両側の壁と先に続く闇だけだ。
ほんとうにここはレッドドラゴンフライの住処なのだろうか。
「あぁ、やっぱ気味が悪いな、ここは……」
小声でボソッと言ったにもかかわらず、デントのその声は大きく響いた。
慌ててデントは口を押さえたが、もう遅い。
何かが動き始めた。
奥から聞こえていたカサカサという音がだんだん近づいてくるのが分かった。