「はぁ〜? 宝探しぃ〜?」
デントが間延びした声を出した。
デントに限らず、いきなり「宝探しをしてもらう」といわれたら誰でもこうなるのではないかと思う。
「そうさ、宝探しさ。二人には関所近くの洞窟に行ってもらう。中から持ち帰ってくるものはコレだよ」
そう言うと、カウンターの裏から小さな卵を取りだし、慎重にカウンターの上へと乗せた。
「なんですか、この卵は?」
「…………」
いぶかしむ楽とは対照的にデントは黙ったまま卵を見つめている。
「おや、デントには分かるようだね。
そう、コレはレッドドラゴンフライの卵さ。
といっても、コレは本物じゃなく、良くできたレプリカだけどね。
二人にはこのレッドドラゴンフライの卵を捜してきてもらう」
一方的に、しかも強い口調で女主人は言った。
デントは黙ったままそのレプリカを見つめていたが、
「割に合わない……」
そう言うと、座っていた椅子を蹴って店を出ていってしまった。
慌てて楽も続く。
「よろしく頼むよ! 待ってるからね!」
女主人の半ば嬉しそうな声が後ろから響いてきた。
店の門を少し出た辺りでデントに追いついた楽は疑問を投げかけた。
「あの卵を捜すのはそれほど大変なことなのですか?」
デントは答えない。
「一夜の宿を借りた礼ではありませんか。
気持ちよく引き受けるのが義だと思いますが」
デントは答える代わりに眉間にしわを作って楽をにらみつけた。
「おまえは何も分かっちゃいないんだ、レッドドラゴンフライのことを。
俺だってこの町に来て日が浅いが、奴らに関しての知識は持ってる。
卵を奪ってくるということは、奴らの住処に入っていくことなんだぞ!
それがどれほど危険なことか分からないのか!」
デントは相当な剣幕だ。
「それでも拙者は行きます。あなたが行かないのでしたら一人で。
その洞窟の場所だけ教えて下さい」
きっぱりと楽は言い切った。
「…………おまえ、バカだな……」
唖然とした顔で楽を見つめていたデントはプッっと吹き出し、眉間のしわを解いて楽の肩に手をかけた。
「負けたよ。行くよ、行きゃぁいんだろ。
自分より若い小僧を一人で洞窟に投げ込んだらそれこそ笑い者だ。
見たところおまえも武器を持ってる様だし、大丈夫だろ。
いざとなったら逃げればいいんだ。
……あ〜あ、まったく、楽しい宝探しになりそうだよ!」