「ヤバい……気付かれた。……入り口まで逃げろ!」
デントはそう言うと、一目散に入り口目指して駆け出した。
デントのあまりの逃げ足の速さに驚くが、途中、石か何かにつまづいたのか、バランスを崩してくれたおかげで楽は追いつくことができた。
「これなら、逃げれる、かもな。もう、こんな所は、ごめんだ!」
息を切らしながらデントが話しかけてきた。
いや、ただ叫んだだけかもしれない。
そんなに奥まで入ったつもりはないが、どこまで行っても闇だった。
一本道をずっと進んできたので、道を間違えるはずはない。
たいまつの小さな光が頼りなげに闇を照らす。
後ろからは依然として何かがかすれるような音が聞こえ、こころなしか、その音が大きくなったように感じる。
しかし後ろを振り返ってもそこにあるのは闇だけで、何も見えなかった。
二人は無言のまま走り続けた・・・見えない入り口に向かって。
やっとの事で入り口の光が見えてきた時だった。
今までは気にしない程度の大きさだったその音が、急に大きくなった。
今、後ろを振り返れば“何か”の正体を両の眼で確かめることができただろう。
しかし二人は振り返らなかった。足を止めることはできない。
その音の大きさから、止めたら最期だと分かっていたから。
しかし、入り口目前という所で、
耳の横、腕の横、頬の横、足の横をかすめて何かが移動して行くのが分かった。
あの音が前からも後ろからも横からも聞こえる。
デントの持つたいまつの光が、赤く蠢くレッドドラゴンフライを照らしていた。