「何でも屋?」
初めて聞く言葉に、楽はまたしても怪訝そうな表情を返した。
「そ、何でも屋。普通こう言うと、『よくあるアレか』って思われるんだけど、あなたは知らないの?
格好もそうだけど、変な人ね」
ヘスティアと名乗ったその女性が言った。
すると、間髪入れずに肩に止まっていた鳥が鳴いた。
(ちょっとヘスティア、初対面の人に失礼でしょ!)
「あ、ごめんごめん。
そうね、シェーナの言う通り、今のはちょっと言い過ぎたわ」
そう言って、ヘスティアは謝った。
シェーナの言う通り?
今誰か喋ったのだろうか……。
楽には聞こえなかった。
まだ暗がりにいてよく見えないが、もしかしたら後ろに仲間がいるのかもしれない。
そう思いながらも、楽が不思議そうな顔でヘスティアを見つめていると、また鳥が鳴いた。
(ねぇ、なんか不思議そうな目でこっちを見てる。
いきなりイリスと現れたから驚いてるのかもしれない。
一応、言っておけば? ビーストマスターだって)
「そうね」
肩に止まった鳥の鳴き声に耳を傾けていたヘスティアがこちらに向き直る。
いきなりの出来事に呆然としていたエルファが楽の隣にやってきた。
「私、ビーストマスターなの。
動物と話せるし、扱うこともできる。
さっきの子はイリス。見た目は恐いけど、やさしい子なの。
それで、この子はシェーナ。私の一番の友達よ」
その言葉に合わせて、鳥がもう一度鳴いた。
「それで……」
ヘスティアは少し前に歩み出て、腕を突きだした。
焚き火の火がヘスティアを照らす。
褐色の肌に銀色の髪。その髪が焚き火の光でキラキラと輝いていた。
「この腕輪が私の友達の居場所」
にっこり笑いながら、片腕に光る腕輪を指し示した。
その後もヘスティアは色々なことを話してくれた。
召喚術と何が違うのか、そして、どうしてここにいきなり現れたのか……。
エルファと楽は、黙ってその話を聞いていた。
ヘスティアの言葉に相づちを打つように、時々、肩に止まったシェーナが鳴いたが、楽には何と言っているのか全く分からなかった。
ヘスティアの話が一段落つき、楽とエルファは助けてもらったことに礼を言った。
そして、話が終わった時、いきなり二人の前に現れた不可解で不思議な旅人は、二人を明るく惹き付ける旅人になっていた。
「ヘスティアさんはこれからどこに向かうんですか?」
焚き火に木をくべながら楽が訊いた。
「私? 私はワジュールへ行く途中。
ずっと歩いてるのに、全然先が見えない……砂漠って広いわね」
「ワジュール? 闇市の開かれるあのワジュール?」
ヘスティアの答えにエルファがまた問いかける。
「そうよ。私、闇市に行こうと思ってるの。
ちょっと前にある人からその事聞いてね、面白そうだと思って。
開催期間は10日間と短いらしいけど、まだ20日近くあるんだし、ずっと歩いていけばまだ間に合うわ。
……あなた達も闇市の事知ってるのね」
今度はヘスティアが問いかけてきた。
「はい、まぁ……拙者達の目的地もワジュールですから」
「それに、その目的はヘスティアと同じで闇市だよ」
楽の言葉に続いてエルファが答えた。
「……なんだ、そうなの? 早く言ってくれればいいのに。
それにしても、『闇市』っていうくせに、随分いろんな人が知ってるのね。
もっと限られた少人数での、人知れず行われる市かと思ってた」
少し残念そうにヘスティアがつぶやいた。
「今回の闇市はそういう類の市ではなく、一般の旅人も参加できるようです。
売っている品物がちょっと変わっている……というか、非合法の物、大昔の古品が多い市だと、拙者は聞きましたが……」
「? それは初耳だわ!
なんだかお金の匂いがするじゃない! これは絶対に行かなきゃ!
ねっ、シェーナ?」
ヘスティアの目が輝き、シェーナは「勝手にしなさい」といった感じで一声鳴いた。
「ねぇ、ヘスティア。
もしよかったら一緒に行かない? ワジュールへ」
ヘスティアが「それじゃぁ」と言って立ち上がった時、エルファが言った。