ファンタジア

ヘスティア5

「一緒に?」
 きょとんとした顔でヘスティアはエルファに聞き返した。
「…」
 少し考えた後、笑顔でかえす。
「いいよ。やっぱり旅は大人数の方が楽しいもんね」
「本当!? じゃあ改めて、僕はエルファ・フィスト。よろしく」
 そんなに喜ばれるとは思わなかったわよ…とか思いながらヘスティアは苦笑する。
「で、こっちが楽」
 エルファが楽の方を向いて言った。
「こっちってなんですか…楽です。以後よろし…」
 楽が言い終わらないうちにエルファがシェーナに手をのばす。
「この鳥…シェーナってしっぽが長いんだな…つっつくなってば」
「…」
「…」
 妙な沈黙が流れた。
 エルファがシェーナの長い尾に触れるとシェーナはエルファの頭にとまった。
「わあっ」
「気に入られたみたいね。さ、そろそろ寝ましょう」

 先程の事もあり、今度はエルファがテントの中で一足先に眠る事にした。
 楽とヘスティアは外で火を炊いた。
「あの鳥…拙者の母国で見たことがあります。確かキリュアガグ…とにかく発音しにくい名前でした」
「キリアガライトスっていう種類の鳥よ。草色で尾が体よりも長いの。で、知能が高い」
 ぱちぱちと火の粉が飛んでいる。
「母国って何処なの?」
「拙者はテーヴァ出身です…」
 言葉を区切った後、楽はどこか寂しそうな表情をしたが、ヘスティアにはよく分からなかった。
 だから気にせず喋った。  
「私は…ここ。ストレシアよ。アスリースに近いユーラストルって町の傍…」
 今度はヘスティアが苦い顔をした。
「…まぁ、人生色々あるよね」

 テントの中ではエルファがごろりと転がっていた。
「…さっきはびっくりしたなあ」
 褐色の肌の男達。
 あのまま連れ去られていたら自分はどうなっていたんだろう。
 どこか他の国へ売られていたのだろうか。
 最近は人買いという仕事はなくなったが、ストレシアでは何があるか分かったものではない。
 そうしたら自分が有翼人という事がばれ―――
 そこまで考え、エルファは身震いをした。
「もう寝よう」
 呟き、一緒にテントに入ってきて床に下りているシェーナの長い尾に触れる。
 なんとなく気に入ってしまったのだ。
「翼…」
 視点をシェーナのたたまれている翼に移す。
「僕と同じ…翼」

 こうして、意外な乱入者の加わった長い夜は閉じた。

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