ファンタジア

在村楽5

 店をめちゃめちゃにした後、ようやくデントが眠った。
 ガイアの女主人は楽を連れと判断し、あからさまに迷惑そうな視線をこちらに送っていた。
 もうこの店には居られない……そう思った楽はデントを担いで店を出ようと一歩を踏み出したが、いつの間にか後ろに回り込んだ女主人に腕を捕まれて動けなくなった。
 この女主人、かなりの力の持ち主だ。
「あんた、外に出るのはやめておきな。通行証持ってないんだろ?」
「はい……」
「今日はここに泊まっていきな。勿論、店をめちゃめちゃにした償いは明日してもらうがね。」
「……すみません……ありがとうございます」
 その返事を聞くと、女主人は楽を掴んでいた手を放し、「寝床の用意をするから」といって奥へ行ってしまった。
 この町に来てから初めて感じた温かさだった。

 他の客は皆2階の寝室へ引きこもり、カウンターには楽と眠ったままのデント、そして女主人だけが残された。

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