エルファの見つけた城は、やはりストレシア城だった。
エルファにせかされて急いで門の近くまで来ると、砂漠の民、ストレシア騎士団が迎えてくれ、それと分かった。
エルファがストレシア出身ということもあり、比較的すんなりと門をくぐることができた。
門を入って少し歩くと、そこには城まで続く一本の道が伸びており、その道の両側に果物や木彫りの人形、珍しい宝石などを売る店が立ち並んでいた。
店の後ろ側には小さな住居が所狭しと並んでおり、裏路地に入ったら迷って抜け出てこられないような感じさえする。
ザクとは比べものにならないほどの大きな町が城壁の内に組み込まれているようだ。
思っていたよりもずっと大きな城である。
楽がストレシア城に来た目的、それは剣の達人の情報を得るため。
ストレシアは治安が良いとは言えないが、その分、5国の中で一番強者達がそろっている国である。
その強者達の性格はどうあれ、誰かは必ず達人のことを知っている。
そう踏んで、楽はストレシア城に来たのだった。
ストレシアで一番情報の行き来が激しいと思われるこの城へ。
エルファと並んで城に続く道を歩いていると、前方から、お世辞にも良いとは言えない人相の一団がやってきた。
左右の店にヤジを飛ばしながらこちらに歩いてくる。
「けっ、何だよこの品は! 腐ってんじゃねぇのか!!」
「おい、これいただくぜ! 代金は付けで頼むぜぇ」
「そこどきな! ぐずぐずしてると踏みつぶすぞ!」
店の亭主、そして道行く人々は、黙ってされるがままになっている。
逆らったらどうなるかをよく知っているからだ。
腰には一様にカムシーンを提げ、反抗の目つきで見る人々にはこれ見よがしにちらつかせている。
と、前からやってくるそんな集団に目を見据えて歩いていた時、後ろからパタパタと走ってくる子供がいた。
その子供は楽達の後ろに来てもその勢いを止めず、そのままエルファに体当たりした。
ドンッ!
勢いにのった少年の体当たりは、エルファを突き倒すのに十分だった。
不意をつかれたエルファはしりもちをつく。
「あっ、ごめんなさい!」
少年はそう言ってエルファに手を差し伸べる。
しかし、その手はエルファの手をすり抜け、エルファの鞄に伸びた。
ズシャッ!
それは一瞬だった。
少年は袖口に隠していたナイフでエルファの鞄の紐を切り、銀貨で重くなった鞄を鷲掴みにすると、ものすごいスピードで店の間をすり抜け、裏路地へと消えていった。
あまりに突然の出来事にエルファはしばし呆然とするが、何も言わずに立ち上がると、少年を追って裏路地へと入って行った。
それを見て後を追おうとする楽。
しかし、その楽の肩をがっしりと掴んで放さない者があった。
「あれあれぇ〜。どこにいくのかなぁ。あっちはあっち、こっちはこっち。俺達と鬼ごっこでもしないかい?」
先程から前方を歩いてきた男達であった。