少しの間二人で笑った後、楽は立ち上がった。
「もう行くんですか?」
「はい、出来るだけ早く行きたいので。ストレシア城」
エルファは「よいしょ」と立ち上がると、袋を背負い直した。
歩き出す。
少し歩いて振り返ると、バージリアのオアシスが小さく見えた。
やがて日が沈んでいき、砂漠が朱色に染まり始めた。
気まずくはなかった。
エルファと楽は今まで旅してきた中での楽しかったことや、意外だったことを話し気がつけば日が半分ほど沈んでいた。
「楽。今日どこかで野宿するんでしょ?」
「はい。もう少し歩いたら今日はもう休みましょう」
「うん!」
日は沈みきっていた。
風がきつい。
楽とエルファはテントを張り始めた。
そうしている間にも砂漠の夜は容赦なくきつい風を送ってくる。
テントが張り終わったのは、風がもっとも強くなった時だった。
エルファはいそいそとテントの中に入ると、さっさと寝袋の中に潜り込んでしまう。
楽はそんなに疲れたのかと苦笑すると、自分も寝袋に潜った。
エルファはなかなか眠ることが出来なかった。
ごそ、と寝袋から顔をひょっこり出すと、隣で静かな寝息をたてている楽をうらやましげに見る。
(楽は、思った通りいい人だけど。僕が有翼人って事知ったらどうするだろ? あのおばさんみたいにされるのかな? でも人間以外の人種と一緒に旅してる人って結構いる……って聞いたことあるような無いような……。まぁ言わなきゃいけない時が来たら、言えばいいや)
エルファの脳裏に前の宿のおばさんがよぎる。
ふるふると頭を振り、その思いを無理に消そうとする。
「有翼人って不利だな」
そしてまた、寝袋の中に潜り込んだ。
楽はエルファが考えをしている時から起きていた。
最後の言葉はしっかりと聞き取れていた。
(有翼人なのですか……)
楽は再び目を閉じた。
次の日、月が沈み太陽が昇り始めた頃。
二人はテントをたたみ歩き出していた。
歩く、歩く、歩く。
日が東45°くらいに上ってきたとき、
「あ、あれってストレシア城かな?」
エルファが目を凝らして言う。
楽が同じ方向に目を凝らすと、何か物体が見えた。
「ああホントだ。ストレシア城かどうかは解りませんが……」
「やったー! やっと着いたーー!」
「あのだから城かどうかはまだ解りませんよ」
「ううん! 絶対城だよ!」
エルファはニッコリと笑って「早く早く!」と楽をせかした。