気がついたときにはベットの上にいた。
どうやらザブルによって倒れているところを回収されたらしい。
隣のベットにはデントが疲れ切った顔をして眠っている。
「気がつきましたか?」
不意に足元の方からザブルの声が聞こえた。
声のした方向を見ようと体を起こす。
と、脇腹から激痛が走った。
「うっ……」
思わずのけぞり返る痛みである。
「まだ動いてはいけません。
あなたの傷はかなり深いものです。
テラ=ドラは、あなたにとってすこし手強かったようですね」
ザブルはサラッと言った。
「しかし、あなたは見事に力を呼び覚ましました。
まだまだ荒削りのものですが、磨けばどんどん光る才能です。
よく頑張りましたね」
そう言ってザブルは少し笑った。
会ってから初めて見る笑顔である。
この人も笑うんだ……そう思うと楽は嬉しくなった。
そして、ザブルはデントの方を見やる。
「デントさんも無事、今日の修行を終えました。
今は疲労で眠っていますが、そのうち目を覚ますでしょう。
あなたももうしばらく眠っていなさい。
私はこれからジュウマを回収しに行きます。
彼もあなた方と同じように森の中で倒れていることでしょう。
今日の修行はジュウマにも少しハードだったようですから」
それでは、と言ってザブルは部屋を出ていった。
数分後、デントが目を覚ました。
「うわぁぁぁぁぁぁ!」
絶叫と共に……。
デントはどんな修行をしたのだろうか。
見た感じでは大きな傷やケガは無いようだ。
ただ、ひどく興奮していて、呼吸が荒い。
ここがザブルの小屋だというのも良く分かっていない様子だ。
ラマンダ、サラマ……アクエ……エリアス
と、何やら良く分からない事をブツブツとつぶやいている。
「デントさん、大丈夫ですか? 今日の修行はもう終わったのですよ」
声をかける。
が、相変わらず良く分からないことをつぶやくだけで反応がない。
「話しかけても無駄さ。
今、デントは精神の錯乱状態にあるからな」
楽と同じように傷だらけになったジュウマが部屋に入ってきて、デントとはす向かいのベットに腰掛けた。
「俺とおまえは力の面での修行、デントは精神面での修行だ。
結果、俺とおまえは傷だらけ、デントは精神錯乱。
まぁ、しょうがないな、この違いだけは……。
今、師匠が気付けの実を探しに森に出ている。
もう少し待てば師匠が助けてくれるさ」
言葉の通り、しばらく待つとザブルが部屋に入ってきた。
その手に提げられたかごには青い木の実が山ほど入っている。
そのあまりの量に楽が不思議そうな顔をしていると、ザブルがその実について説明してくれた。
「これはユバキの実です。
町ではあまり見かけませんが、森の中にはたくさんあるのですよ。
初めて見ますか?」
楽が首を縦にふる。
「そうですか……そうでしょうね。
この味はあまり人に好まれないので、知っている人も少ないのでしょう。
効き目は確かですが、大量に食べないと効果がなかなか現れないのです。
さぁ、ジュウマ。デントさんを支えていて下さい」
指示に従ってジュウマはデントを支え、ザブルは両の手のひらいっぱいにすくったユバキの実を少しずつデントの口の中に転がし込んでいった。
木の実が口の中いっぱいに含まれ、デントの口が上下に動く。
どんな事がデントの体の中で起こっているのかは分からないが、その効果は外から見ても確実に現れた。
というのも、一瞬ぐったりとなったデントが次の瞬間、カッと目を見開き、何かに弾かれたように立ち上がったからだ。
「気がつきましたね」
空になったかごをテーブルの上に置きながらザブルが言った。
よほどの味なのだろう、デントの顔は苦々しく、1、2度せき込む。
デントのその様子を見て、ジュウマが笑い出した。
たぶんジュウマにも同じ経験があるのだろう。
出来るならばあまり経験したくないものだ。
楽は前にも同じような光景を見たことがあった。
その時の事を思い出して思わず口元がほころぶ。
まだ一月も経っていないのに、洞窟での出来事がひどく懐かしい。
……いつの間にか日は変わり、もう昼になっていた。