そして……朝がやってきた。
パブ・ガイアには昨日よりも3人の客が増えていた。
すなわち、楽、デント、コネッカの3人である。
明け方近くにこの酒場町ウェストルに戻ってきた3人は女主人の熱烈な歓迎によって、すぐにガイアに迎え入れられた。
2階の一室にコネッカと、デントを担いだ楽を案内すると、一人興奮する女主人は色々なことを矢継ぎ早に訊ねてきたが、未だ目を覚まさないデントと、疲れた表情をした初めて見る老人の姿に気付き、我を取り戻したのか、急いで寝具の用意を始めた。
「昼になったらじっくり聞かせてもらうよ!
それまではゆっくりここで休むといい。疲れているんだろう?」
そう楽に言うとドアを開け、階段に向かって歩いていった。
楽は女主人に一礼し、デントをその部屋の一番端のベットに横たわらせた。
振り向いてコネッカを探すと、コネッカはいつの間にか真ん中のベットにもぐり込んでいて、幸せそうな寝顔でなにやら寝言を言っている。
窓の外からは、朝を迎えた町の人々が一斉に飛び出してきて昨夜のことを興奮気味に話しているのが聞こえてきた。
その中心にいるのはどうやらガイアの女主人のようだ。
楽達の長い一日が終わり、ウェストルの新しい一日が始まろうとしている。
……………………
話題の中心にいる肝心の3人はガイアの一室で日が高く昇るまで眠っていた。
なかなか下に降りてこない3人に業を煮やした女主人はドカドカと階段を駆け登ると、3人の部屋のドアを荒々しく開け放ち、乱暴に3人を揺さぶって無理矢理に起こした。
「……お、おはようございます……」
「……な、なんだよ、誰だよ、ここどこだよ……」
「……わし、もうちょっと寝ていたい……」
急に眠りから引きずり出された3人は三者三様の顔で女主人を見つめた。
「さっ、昼になったよ。あたしゃ、もう待ちきれない。下のみんなだってそうさ。はやく昨日の出来事を話しておくれ!」
どこからどう話そうか戸惑う楽、
何が何だか分からないデント、
そして、女主人の熱い眼差しに目を輝かせている人物が一人。
さっきまでの眠気はどこへやら、女主人を連れていち早く階下に降りていったのは、言うまでもなくコネッカだった。
何十年ぶりかに外に出て、大勢の前で昨日の出来事を語るコネッカはいきいきとして本当に幸せそうだった。
自慢げに、かなりの誇張を交えて一部始終を話す。
自分の若い頃の話、そして洞窟での生活、楽達との出会い……
その話は延々と続いたにもかかわらず、ガイアに集まった大勢の町人たちは熱心に聞き入っていた。
その間に楽は混乱気味のデントに気を失ってからの事を話した。
「そうか……それでこの店に……。
それにしてもあのばあさん、よくあれだけベラベラ喋れるな。
昼から喋りだしたのに、もう陽が沈んじまう……
まぁいいか。ばあさんもやっと幸せを手に入れられるんだ。
あの洞窟での孤独な生活から解放されて……」
「そうですね……
コネッカさんのあの性格ならこの町で楽しくやっていけると思います」
「そりゃそうだ」
どちらからともなく笑いがこみ上げてきた。
陽が完全に沈み、町の灯りがチラホラと見える頃になってコネッカの話はようやくその幕を閉じた。
町の人々はいままでに聞いたこともないような話に時を忘れて聞き入っていたため、もう夜になっていることを知らなかった。
夜。一昨日までならもう外には出られない。
しかし今は違う。もうレッドドラゴンフライはいない。
それでもやはり町の人々はおそるおそるガイアのドアを開けた。
そして、その目で安全を確かめると同時に一斉に外に飛び出していった。
人々は歌い、踊り、ジールを飲んでこれからのウェストルに乾杯した。
こうして酒場町ウェストルの夜は更ける……。
次の日の朝、
昨日と同じ部屋で目覚めた3人は、女主人によって町長の家に案内された。