「お前はっ! 今日のわしの昼メシに、犬の毛まで入れおったのかっ!?」
見張りエルフの家である狭いテントの中で、ルウが大きな声をあげた。
「犬の毛までって……。私、他に何か入れたかなぁ?」
リーザは他に思い当たる事は無かった。するとルウはため息まじりにこう言った。
「今日のワシのおかゆに、何かの瓶のカケラのようなもんが入っていたぞ?」
「あ〜、それかぁ! あれはねぇ、ココナッツバターを入れようと思ったの!
だけど間違えて瓶ごと入っちゃったから仕方なく砕いて……」
「もういいわ! この……」
と、いいかけてルウは自分が何か柔らかいモノを踏みつけたのに気づいた。
「ん……?」
ルウがそういっている間に、リーザはそれがなんなのか悟った。
間違いなく、自分が仕掛けたあのスカンクだ。
ルウが悲鳴をあげる間に、リーザはダッシュでテントを出ていた。
走りながら、リーザはシェプシに摘んできた花を渡しておいて良かったと思った。
シェプシは賢い犬だから、きっと花瓶に挿しておいてくれるだろう。
あんなとこに花を持っていったら、今頃花は腐っているに違いない。
可哀想なのは見張りエルフだった。
彼は家が強烈なニオイを放っているため、一晩野宿するハメになったのだから。
ルウの病気は、別に命にかかわることでは無かった。
ただもう何年もすれば、彼は完全に失明してしまうのだ。
リーザは家(族長の家)の広い応接間に花が飾ってあるのを見てから、自分の部屋に戻った。そして、あの花の中に、万能薬の花が入っていないことも分かっていた。だから彼女は、ずっと前から旅立とうと決めていた。
それに……。
リーザは、自分のこめかみのあたりの髪を掻き上げて、鏡を見た。
わたしはエルフでもフェアリーでもない。
鏡に映った、自分の三角の耳を見た。それにはシェプシのような白い毛が生えていて……先っぽは黒い毛で覆われていた。
きっと、私は獣人なんだろうな、とリーザは思った。
だとしたら、やっぱりこの村を出て行かなくちゃならない。
この村の人々は、平和を望んでいるから。
獣人は、バトルが好きだともっぱらのウワサだから。
リーザはため息を付いて、いつも肌身離さず持っているお守りの首飾りを手に取った。真ん中には丸い窪みがある。
これが、彼女に与えられた、たった一つのヒントなのだった。
そこに宝石をはめようと、いくらその大きさになるようにしても、首飾りは石や宝石を受け付けなかった。
きっと、何か特別なモノなのだろう。
薄暗い部屋の中で、シェプシはもう眠っていた。リーザは灯りを消し……
そして、明日旅立とうと決心した