翌朝。
リーザは早朝から村の中を走り回っていた。そして
部屋に戻り、さも今まで寝ておりましたと言わんばかりにゆっくり下へ朝食をとりに行った。
その後部屋で着替えをして、シェプシとともに村の出入り口まで歩いていった。
リーザは一面アクアブルーの、白い縁取りのあるワンピースを着ていた。
ウエストを白い帯できゅっと結んでいる。
リーザはいつも白のローブを着ていたので(といっても、露出度が高いのに変わりはないのだが)村の人々が何事かと出入り口に集まってきた。
「姫さま? 一体どうしたっていうんだ?」村のエルフの青年が口を開いた。
リーザはいつも明るくていたずら好きだったため、村の人からは「姫さま」と呼ばれていた。
「あのねっ、私、いったんこの村を出ようと思うの」
リーザがくったくなく笑う。村人達は驚いた。
「な、何でっ? この村がそんなにイヤだった!?」
万能薬の花の事を教えてくれたフェアリーの娘が聞いた。みなが口々に質問を浴びせようとしたとき、族長ルウが歩いてきた。
「お前は知っておったはずじゃ。自分がこの村の住人ではないことをな」
皆が一斉に驚きの声をもらした。「……うん」リーザは今度は少しはにかんだ感じで笑った。そして、自分のこめかみのあたりの髪をあげた。
今度は村人達が息をのんだ。彼女の髪の下には、あるべき尖った耳は無く、変わりに白と黒の毛の生えた、獣の耳が出てきたからだった。
「さよう。このリーザはわしが族長になったばかりの日に、村の出入り口にやってきた獣の子だったからの。どこから来たのか、なぜそんなに傷ついているのか何も答えなかった。だから、わしが今までエルフとして育ててきたのじゃ」
族長が話し出した。皆は驚きのために開いた口がふさがらないようだった。
「そういうことなんだ。だから、私自分が何なのか……たぶん獣人だろうけど……探そうと思う」
リーザは、村人達の目が、驚きとともに恐怖の色が浮かんできたのが分かっていた。けれど、それも仕方がないと思っていた。
獣人は好戦的だと聞く。彼らが恐ろしがるのも無理はないだろう。
だから、努めて明るく笑っていった。
「今までダマシてて、ごめんね。こんなつもりじゃ無かったんだけど」
「……違うよ。僕ら、リーザの事嫌いじゃないからな。村人全部だ。
獣人でも、あんたは僕らを傷つけなかっただろ?」
その一言で、皆我に返ったようだった。口々に皆そういった。
「しかし……。姫さまのいたずらももうこれきりかと思うと悲しいわね」
別の女エルフが言った。
「あ! それなら大丈夫っ! 今日の朝、2000点くらい仕掛けておいたから♪」
リーザは自分が信じられなかった。嬉しくて、胸が張り裂けそうだった。
「に、2000……」ルウが言いかけた所、彼の胸ポケットの財布から、何かが飛び出してきた。
ぴょーん。小さくてぴょんぴょんはね回るもの……それはバッタだった!!
少女は悲鳴をあ
げ、男達は笑い転げた。その間に、リーザはもう出発していた。
村人は笑いながら泣き、泣きながら笑った。
リーザはシェプシに言った。
「私って、しんみりした別れはイヤなの」そして走り出した……。