「は〜…まだワジュールに着かないの?」
「……」
「何でこんな夜に行動するのよ〜」
「……」
「あんたやイリスは夜、目がきくらいいけどあたしは苦手なんだから〜」
「…目を閉じてるからでしょ」
「だって眠いんだもん〜」
「……」
「大体ね…」
「うるさいっ!! もう黙っててよ!! 何のためにイリスをだしてると思ってるの?」
「分かったわよ〜…短気なんだから、ヘスティアは」
「がるる…」
すっかり日の暮れた砂漠を1人と1羽と1匹は昨晩から歩きつづけていた。
なぜこの時間に移動しているかというと、ヘスティアいわく
「朝昼は暑いじゃない」
とういう事らしい。
もっとも、なんだかんだいって一日中歩いているが。
さっきから喚いているのはいつもヘスティアの肩にとまっている草色の鳥、シェーナである。
実は彼女、人語を理解し話せるのだ。
珍しい種類で狙われるという事もあり、普段は話さないが。
「ワジュール?」
「ええ。そこでもうすぐ闇市が開かれるそうよ」
旅立つ直前、リューファが教えてくれた。
「何でそんな事…」
「これでもわたしはちょっと前までシーフをやってたのよ。今でも色んな情報ルートを持ってるわよ」
(そんな威張っていう事でもないと思うけど…)
という訳で、ヘスティアはワジュールへと向かったのだった。
「ねえ、ところで何でイリスをだしてるの?」
「用心よ、用心。盗賊ってのは夜にでるんだから。それに変な奴にあったら大変でしょ」
「ふうん…変な奴?」
「この前のサンドスネイクみたいな奴…ん?」
ヘスティアの視界にテントらしきものが入った。
「こんなところでキャンプ…度胸あるわね」
シェーナが目を開けた。
「本当だ。でも別に火をたいていたら平気じゃないの…でも盗賊に狙われるかもね?」
「…近づいてみようか」
「はぁ? 何で」
「うるさいな、いいでしょ、別に。盗賊だったら何かかっぱらう」
「物騒ね」
ゆっくり、足音を立てずに近寄っていく。
「? 馬がつないである。これに乗ってるのかしら」
「さあね…シェーナ」
「何よ」
ヘスティアの目が細くなる。
「…男の子が一人…」
「それが?」
「盗賊に捕まってる」
「…何よそれ」
シェーナものぞく。
見ると、金髪の少年が4人の男たちに抑えられている。男達は額に赤い布を巻いている。
「あんな小柄な体じゃ逃げられないわね…」
「ちょっとヘスティア、何見てるのよ。助けないの?」
「? 何で?」
「いいから。だってあの子…なんでもない」
「…」
ヘスティアはイリスを見た。
「分かった。イリス!」
ヘスティアの言葉を聞くなり、イリスは砂を蹴った。