ファンタジア

エルファ8

 淡い月の光が、部屋の小さな窓から部屋の中に射し込む。
 エルファは窓を挟んだ月をぼんやりと見つめ考えた。
(僕はずっと仲間がほしかった。楽はいい人っぽいし、一緒に旅してみたい。……けど)
「けど羽根がなぁ」
 バフッとベットに伏せ、すっかり色あせた天井を見上げた。
 真新しいシーツに身体が沈んでいく。
 考えなければいけないことが沢山あった。
「ガロンって誰だったっけ? 聞いたことある。うんある。絶対あるよ! …………でも、思い出せないぃ」
 天井に何か得体の知れない小さな生き物がテケテケと歩いていた。
 近くにあったガラスの破片を手に持ちその生き物に向けて投げた。
「やーい命中ー」
 ふぅ。と一息つくと急に眠気が襲ってきた。
 素直に目を閉じる。
 何分もしない内に安らかな寝息が聞こえてきた。

 次の日。
 エルファが昨日の酒屋の前に行くと、やはり楽が待っていた。
「エルファさん。来てくれたのですか」
「えぇっと、そのなんて言うか…………僕は何も知りませんが。お役に立てたらと」
 金色の髪の毛を指でもてあそびながら、呟く。
 顔を上げるとそこにはニッコリと笑った顔の楽がいた。
 エルファもははぁ、と苦笑し
(う〜ん、付き合いにくな、この人。いい人なんだけど)
 と思った。  
 酒屋にも客がちらほら見え始め、扉の前にいるエルファと楽を邪魔そうな目で見る人が何人かいた。
「そろそろ行きましょうか。歩くの慣れています?」
「あ、うん。砂漠とかいっぱい歩くし」
「そうですか、それなら大丈夫ですね」
 灰色の道をゆっくりと歩き始める。
 やがて立ち並ぶ宿や酒屋は無くなり、薄い土色の広がる砂漠に出た。
 しばしの沈黙の後、エルファが口を開いた。  
「楽、あの、『ガロン』って人のことなんですけど、僕絶対に聞いたことあります名前」
「!」
 自分を期待の瞳で見つめる楽の瞳をさけ、ハァと息をつく。
「ごめんなさい。思い出せないんです」
 ガクンと肩を落とす楽を見て、エルファは咄嗟に言う。
「あ、でも! ……絶対に思い出して見せますから!」
「うん。ありがとう」
 道は無く、ただ広がる砂漠を楽は一足もためらう事なく進んでいた。
 エルファはただ着いていくことしか出来なかった。
 また、沈黙が続いた。

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