「誰?」
(うわ。やば)
あたふたと辺りを見回すが、隠れるところなんて…………
(あったっ!)
階段の後ろに扉があった。
音を出さないように静かにその中に入る。
「…………」
中は薄暗くて、誇りっぽかった。
物置らしい。
エルファは大きな箱の裏に隠れると、おばさんに見つからないことを祈った。
(お願いぃ!)
「あれ? どこかしら? まぁ良いわ」
やがて、おばさんの気配が消え、エルファはホッと息をついた。
箱に寄り掛かり、うつむく。
(どうせ……。有翼人だもんな……)
「っ……!」
哀しみがどんどん押し寄せてきて、涙が込み上げる。
(泣きたい……。誰か……)
込み上げてくる涙を瞳に溜め、立ち上がり廊下に出る。
静かに階段を上がり、自分の部屋に入った。
荷物をまとめ、部屋を出ようとしたとき、階段を上がってくる足音が聞こえた。
足音はエルファの部屋に近づいていた。
(やべ)
部屋の中にあるのは窓一つ。
と言ってもここは二階。
この宿の二階は結構高くて、普通の宿の三階くらいの高さがあった。
(ん〜〜〜〜〜〜〜〜……。もういい!)
窓をガラッと開け、飛び出す。
羽根を使おうとマントを取るが……。
「うわぁ!」
羽根は羽ばたかず、エルファは派手に落ちる。
「……! ず〜っと使ってなかったからにぶっちゃったかな? ……っていうか落ち着いてる暇ないよぉっ!」
ちょっとよろめきながらも全力疾走する。
後ろを振り返ると、おじさんが同じく疾走してくる。
前を向き直ってまた走る。
走る。
「はぁぁぁぁぁぁ!」
息をつき、振り返るがもう追ってくる姿は無い。
息をついたのも束の間、手に持った袋を開けて気づく。
「……財布忘れた」
ため息をついた後、いいことを思いついた。
「……仕事……するか……」
ゆっくりと歩き出して、人のいる場所を目指した。
砂漠とオアシスの境目らへんに人が集まっている場所を見つけた。
どっこいしょ。と石の上に座り込み、手を叩く。
一斉に人がエルファを注目する。
それを確認すると、エルファは息を吸い込み、歌い出した。
歌詞のない、ただ音楽を紡ぐだけの唄。
それが逆に人々の注目を引いた。
彼の周りに、野次馬達が集まり始めた。