ファンタジア

エルファ20

「ヘスティア」
 エルファとヘスティア、とシェーナの二人と一羽は、それぞれの翼で薄暗い裏路地を浮遊していた。
 あの後男達は、行き止まりの道に誰もいないことを確認すると、他の道を探していった。
 もう追う相手は居ないのだからさっさと降りれば良いのだが、エルファは混乱していて降りることさえもままならなかった。
 ヘスティアは、何も言わず浮遊するエルファの後ろについて飛んだ。
「ヘスティア」
 もう一度、エルファはゆっくりと彼女の名を呼んだ。
「何?」
 ヘスティアはエルファの隣りに来ると、首を傾げて聞いた。
 エルファはヘスティアを見ると、少し大きな声で言った。
「僕知らなかったよ! ヘスティアが竜族だったなんて!」
「だって言ってないもの」
 エルファはヘスティアの言葉を無視して続ける。
「どういう事だか説明してよね!」
 ヘスティアは、「いいよ」と言うと、地面に降り立ち曲がり角まで走っていった。
 エルファが追うと、そこにはおいしそうな匂いを漂わせている肉団子屋。
 ヘスティアはそれを幾つか買うと、半分をエルファに押しつけた。
 薄暗い路地の割ときれいな隅っこに二人は座った。

「隠してたけど私は竜族なのよ。ごめんね」
 肉団子をぱくぱくと食べるエルファに向かってヘスティアは謝った。
「どうして隠してたの?」
 肉団子を口へ運ぶ手を止め、エルファは謝るヘスティアへ聞いた。
 ヘスティアは、片手で髪の毛をくしっと撫でると、答えた。
「いやね。別に隠すつもりはなかったんだけど、なんかいろんな事があって言いそびれちゃっただけ」
 えへ。と笑うヘスティアを見て、エルファは言った。
「別にいいけどね。竜族だからってどう。って訳じゃないし。ただ隠してたことが嫌だったんだ」
 エルファは、肉団子の袋の中にもう一つも入ってない事を確認すると、「よし」といって立ち上がった。
「今日はもうやめようっと。宿を探す?」
 立ち上がって歩き出したエルファの背後から、ヘスティアが言った。
「ちょ……。エルファ! 私まだ肉団子全部食べてないっ……。シェーナ! あんたまで私を置いていかないでよ」
 袋を閉じて、急いでエルファとシェーナを追った。

 

「そんなことよりお腹空いたね」
「今食べたばっかりでしょ」
「肉団子だけじゃお腹はふくれないよ」
 夕焼け色に染まる道。
 二人と一羽は、宿を探して大きな道に出た。
 どんっっっ。
 その時、エルファに誰かが当たった。
「あ、すみません」
 エルファが謝ると、当たった人は軽く頭を下げて去っていった。
「ん、ちょっと。なんであなたが謝るわけ?」
「え? どうして」
「だって今のどう見たってあいつが悪いでしょ」
「まぁ、別にいいんだよ」
 エルファはニコッと笑うと右の方に在った宿を指さして言った。
「あそこの宿にしようよ」
「そうね」
 ヘスティアとエルファとシェーナは、その宿へ入っていった。

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