こんばんわ再びブレスです。なんだかとっても緊迫感が張り詰めていますが、俺の話もジャマなような感じがいたしますし、さっさといっちゃいましょう。
「……安全な所って……どこだよ?」
霧の中俺は一人つっこんでいた。悲鳴は大きくなっていた。身を切り裂くような悲鳴に俺は身震いをした。
「ブレスくん!!!」
「エス……」
霧の中からエンペランサが現れた。
「ブレスくん大丈夫? なんともない?」
過保護すぎるぐらい心配しているエンペランサ。俺にそこまで心配するのがなぜか解らない。
「エス。俺は平気だ。ただ……」
「えっ? 何? どうかしたの?」
濃くなる霧の中またあの悲鳴が聞こえた。俺はハッとしてエンペランサを見た。
「あいつに言われたんだ。リエルを連れて安全な所へ避難しろって」
「じゃ、とりあえずリエルちゃんの所行ってみる?」
「そうだな」
濃い霧は俺の足を遅らせた。壁にぶつかったかと思ったら、今度は船べりにぶつかった。
「危ない! ブレスくん! こっち!」
エンペランサに案内され、船内にどうにか入れた。リエルの部屋へ走る。
「リエル!!」
俺は勢いよく扉を開けた。俺の焦りとは裏腹に船外の空を見つめるリエルがいた。
「あ、ブレスか。どうした? そんな慌てて」
あまりの落ち着きぶりに気が抜けた。
「慌ててって……聞こえるだろ? この悲鳴みたいな声」
リエルは至極落ち着いて言った。
「ああ。聞こえるが……それが?」
それがって……俺はエンペランサを見た。
「それがどうしたんだ??」
「あたしを見ないで!」
エンペランサに顔をむりやりリエルに向かされた。
「……という訳でクロスドに言われてここに来たんだ。だから安全な場所へ…」
リエルにどうして焦って来たのか説明をした。
「なら、ここでいい」
「は? いや、だって……」
「海の上に安全な場所はあるのか? 沈む時はみんな沈むんだ」
俺はこの謎の少女が焦りという言葉を知っているのか解らなかった。が、なんだか自虐的なもの言いに一瞬ムカッとしたが、そんなことをしている場合じゃないか。
「星が導いていた。不穏な動きがあることを」
星……リエル……俺はこの子を知っているような気がするのだが思い出せない。
「ブレスくんここでいいじゃない」
「そうだな」
船体全体が大きく揺れ初めていた。
「俺はもう2度と船に乗らない!! 歩いて海だって渡ってやる!」
俺はこの揺れが大嫌いだった。体までグラグラするのだ。そして気分までグラグラと……
「気持ちわ゛る……」
「ちょっとまた? ブレスくん! しっかりして!」
俺はこんな時に気持ち悪くなりあえなくダウンした。
「私のベットに寝たほうがいい」
リエルにまで気をつかわせる始末。情けない……ウッ…それどころじゃないか。
ベットの上で本格的に気持ち悪くなり、意識も朦朧としてきた。
「私は外の様子見てくる」
「でもリエルちゃん危ないわよ、船体も揺れ出したし」
「なら、エンペランサが先導してくれるのか?」
リエルはエンペランサの忠告を無視して、出て行く気満々だった。
「イヤよ。あたしはブレスくんの所にいる。あたしは忠告する所まで。それからのことはブレスくん以外は出来ないわ」
リエルはニコッと笑って出ていってしまった。エンペランサはなぜ笑って出ていったのかさっぱり解らなかった。
「変な子……。……ブレスくんしっかりして!」
俺は朦朧とした意識の中で二人の話を聞いていた。自分がどこまでも情けなくなってくる。俺の意識とは別に涙がこぼれてしまった。
「ブレスくんどうして泣くの?? 泣かないで」
「俺は師匠の所に誰よりも長くいた。そして師匠は俺に世界を見て来いと言った……俺は最初捨てられたと思ったんだ……」
「……それは違うわよ……」
「そうなんだ。違ったんだ。俺は体力がなかなか向上しないことを理由に怠けていたんだ」
「それは竜人としてしょうがないことよ。人間より体の組織がいろい
ろ多いんだから、それをすべて維持していくのに大変なのよ。人間と同じサイズの体にいろいろつめこんでるのよ? 竜人のさだめよ」
「けど努力はするべきだった。どうせ俺は……なんて考えないことだって出来たんだ……」
「ブレスくん……」
「ごめん。情けない主人で」
「そんなこと言わないでよ! あたしを封印から助けてくれたのはブレスくんだよ? これから立派になればいいじゃない! 悲しいこと言わないで!」
エンペランサのピンク色の瞳が涙で濡れた。涙が俺の顔に落ちた。
「虚弱体質だっていいじゃない! その人が輝くのは体質じゃない! 心よ! 心のありかたで輝くことは出来るわよ!! 竜人しか出来ないことだってあるじゃない!」
小さなドラゴンが俺の胸の上に降りてきて小さな手を広げて俺を精一杯抱こうとした。
「泣いてるのか?」
「泣きたくて泣いてるじゃないわよ! ブレスくんの心が泣かせているのよ!」
小さなドラゴンは俺の胸の上でグシグシと泣き出した。
「俺だけここにいるのも格好悪いな」
ベットで寝かされていた俺は上半身をおこした。
「へ? 出て行くの?」
俺の胸から離れた
エンペランサが間抜けに問いた。鼻水が出てるし涙を流したせいで目の周りには濡れていた。もしやと思い胸の辺りを触ってみる。
「!! 汚ねー! 鼻水をここで拭いただろ??」
「だって……出ちゃうんだもん」
俺は気持ち悪さが消えたわけではなかったがリエルを追いかけることにした。
仮にも頼まれたことだし守らなければならないだろう。
ベットから立ち上がり、やつから渡されたナイフを持ち、船外をめざして歩き出すが、また船がグラリと揺れた。
「ウ゛気持ち悪り〜」
おもわず口に手がいってしまう。揺れる船内にヨロヨロとした足取りの俺。
「大丈夫?? 飛んでると全然平気よ?」
俺はエンペランサを見る。
「俺は人前で飛ばない。そんな所見られたら絶対変な目で見られるに違いないんだ。ただでさえ、この頭の髪の毛の色と目の色で変な目でみられるんだから」
エンペランサはそうかな〜と言いたそうに首をかしげている。
船室の外に着いた。
霧がいつの間にか霧雨になっている。エンペランサが風も出てきているこの状態に飛びにくそうにしている。小さな体だと雨や風の強い時には飛びにくいのだろう。俺
はコートの前をしっかり止めてエンペランサを胸の所に入れてやった。
「しっかりコートに掴まってろよ」
「うん。ありがとう。やっぱ優しいねブレスくんは」
俺は人の気配を感じる方に足元に注意しながら歩き出した。