ルークと離れたその翌朝。アルフェリアはまずレイチェルたちが泊まっている宿に向かった。
しかし、レイチェルたちはすでに宿を引き払ってしまったらしく彼女らに会うことは出来なかった。
けれど、そのかわりにレイチェルたちからの伝言を教えてもらうことが出来た。
「ふ〜ん、コロシアム優勝は諦めたんだ」
その手紙には、他の四聖……ラジアハンドにいるセフィーダと言う人に会いに行くことと、こっちの居場所を知らせればレージラールで迎えに来てくれるということが書かれていた。
アルフェリアはニッと不敵な笑みを見せた。
「よっしゃ。んじゃおれがオルドランに会って剣のこと話そっと」
自分が狙われていることを忘れていないわけではない。
が、そればかりに脅えて、楽しむということをしないのはばからしいと思えた。
その日の試合もやはりアルフェリアは圧勝だった。
ラミスサイヤ(レイチェル)が棄権した現在、最有力の優勝候補とも言われるほどだ。
それから数日の間は平和だった。何度かルークと顔を合わせそうになったが、なんとか会わずにすんでいた。一度は試合終了後に待ち伏せしていたこともあったが、その時は空から会場を出た。
そうして、ルークと離れてから四日後…………
とうとうそれがやってきたのだった。
刺客をおびき出すと言う意味もあり、アルフェリアはここ最近いつも不自然でない程度に気を使いながらも人が少ない場所を選んでうろうろしていた。
それは突然だった。街外れ……というかほとんど街の外に近い位置。夕刻と言う事も手伝って人影は全くなかった。
突如降ってきた矢。その数から言って敵は複数だろう。
まずいな…………
アルフェリアの頭にそんな単語が浮かんだ。
相手にするのがきついわけではない。ただ、複数だった場合、一人が連絡に戻り残りがアルフェリアの足止めをすることも可能と言う事だ。ウェノがあれば一人でも実行出来ることではあるが……。
彼らがそうしていないことを祈るのみだ。出世欲の強いやつなら自分達だけでアルフェリアを殺そうと――もしくは捕まえようと――するかもしれない。
降ってきた矢は風の魔法で吹き飛ばした。
「隠れてないで出てこいよ」
そう言ってみたが、彼らは一向に姿を現す気配を見せなかった。
「ちぇっ、仕方ないなぁ」
舌打ちをして、アルフェリアは呪文を唱え始めた。アレンジ済みの広範囲魔法だ。
また矢が降ってくる。けれどその矢はアルフェリアに届くことなく地面に落ちてしまった。
ここまできてやっと、彼らが姿を現した。人数は三人。皆同じような服装をして、顔を隠していた。
三人が一斉にこちらに向かってくる。けれど、そのときにはアルフェリアはすでに呪文を唱え終っていた。
「レイズ・ブリッド!!」
その言葉が放たれると同時に、アルフェリアの周囲に無数の光弾が作り出された。
本来なら作り出された光弾は示された方向へと飛ぶだけだ。これも、最初はその様に動いた。光弾は三方向に飛んでいく。が、彼らはそれを難なく避けてしまった。
アルフェリアは、にやりと、勝ち誇った笑みを見せた。
彼らの後ろで、光弾は方向転換をして彼らに激突する。思っていもいなかった攻撃にさすがに避けることは出来なかったようだ。
直撃を受け、彼らは皆その場に倒れ伏した。
「おれの勝ち……だな」
ここで彼らを殺さなければ自分の身が危なくなるのはわかっていた。一度は彼らを殺そうと剣を振り上げた……が、結局それは出来なかった。彼らが二度と自分を襲ったりしないよう、必要以上に脅してはおいたが。
その時は、終ったと思った。
けれど、それからほんの数日も経たぬ間に、その考えが間違いであったことに気付いた。
一度知られてしまったのだ。今後は襲われる確率が格段にはねあがる。
そしてそれは、アルフェリアの心に恐怖という感情を沸きあがらせた。
見えない恐怖……………それが、いつかのようにアルフェリアの心を蝕んでいくのにそう長い時間はかからなかった。