「なんでこんなところにいるんだ?」
最初にアルフェリアが聞いたのはそれだった。
彼女の名前はユリア。ランディ家の屋敷でメイドをしている人間だ。
こんなところにいるはずがない。
ユリアは俯くようにしてその問いに答えてくれた。
「アルフェリア様がいなくなって五年も経ってますから……アルフェリア様を良く知っている人間じゃないと見つけるのは難しいだろうってことで、私が出されたんです」
くっだらない……
それがアルフェリアの第一の感想だった。
あの屋敷にいたあいだ、部屋から出ていた時間など数えるほどしかない。自分の祖父ですらたったの二回しか会っていないのだ。
アルフェリアの顔を知っている人間は、アルフェリアの身の回りの世話をしてくれていたユリアと、家庭教師の二人。計三人だけだ。
だがキシュマがわざわざ出てくると言う事はないだろう。彼もランディ家の中核の人間なのだから。
残るは二人。だがたったニ人でどうするというのだ。
そこまで考えたところで、アルフェリアは疲れたような調子で溜息をついた。
実際しっかり見つかってしまっているのだから……
「あの
……早くアスリースから離れたほうが良いと思います。
クリス様…アルフェリア様の弟君は体が弱くて……アルフェリア様がいなくなったことで一度はおさまっていた後継ぎ騒ぎがまた戻ってきてるんです」
「わかってる。でなきゃわざわざ探しにこないだろ」
アルフェリアは努めて冷静な口調で返した。
本当はどうするのが一番良いのかわかっている。
さっさとここを離れるのが一番良い。
けれど、そうなるとまた一人旅になる。成り行きでとはいえせっかく一緒に旅をする相手を見つけたのだ。また一人になるのは嫌だった。
「忠告ありがとう。気をつけるよ」
多分ユリアは報告しないだろう。けれど、ユリア一人とも思えない。彼女がそれを自覚しているかどうかは別として……
アルフェリアは、重い足取りで宿の部屋に戻っていった。