「あったまいてぇ……」
俺は頭を抱えベッドにはいつくばり、前日の馬鹿騒ぎに迂闊にも加わってしまった事を深く後悔した。
ここはアスリース城、城下町。
いつの間にやら荷物をまとめ上げられていた俺は、半ば追い出されるようにリルクリルを旅立った。そして、ひたすら東へ。アルサロサ、レアルタなどを経由してアスリース城へ至る。
今回は、いつ帰って来れるかもわからないということで馬車も貸してくれず、始めから終わりまで徒歩だった。人生の半分は歩いたという感じがした。
何日かかったかも覚えていない。この旅の間考えていた事と言えば、安全な道はどれか、町に行きつく道はどれか、アスリース城まで後どれくらいか、ぐらいだろう。そのおかげだろう、ここまで来る間に事件と言う事件は起こらなかった。確かに、長く疲れる旅だったが、純粋な旅を楽しめた気がした。
そうして、城下町の門をくぐる。
そこは、以前俺が来た時そのままの町並みを残していた。獣避けの壁に円く囲まれていて、東西南北にある異様に頑丈に作られた門から中は外とは別世界。自然は無く、地面には白い敷石が隙間無く詰められていて、理路整然と家が並んでいる。メインストリート沿いには華やかな店々が軒を連ねている。このメインストリートからは、深く広い掘りに囲まれた城、アスリース城を高く望むことができる。そして、一番外側の壁と接する通りはアウトストリートには、いわゆるB級の店が並んでいる。ちなみに、城下町は城を中心とした円を作っている。横道は全て、一番内側にあるメインストリートと同心円、縦の道は全てその円の法線を描いている。街を上から見れば、中途半端な蜘蛛の巣に見えなくも無いだろう。
アウトストリートの小さな宿で無理を言って、相部屋で部屋を確保した。そして、久しぶりの城下町の網の目をぶらつく。相変わらず、ずいぶん遅い時間に関わらず街は仄かに明るい。街を埋め尽くす敷石が幽かに光を発しているからだ。暗い森に囲まれたアスリースの人々は夜を明るくする努力を惜しまない。ふと見上げた空には、蒼い月が淋しそうに光っている。
そうか、もうそんな頃なのか。
ぼんやりと考える。向かうアカデミー本部のある都市、クーテットブルグはここから西へ歩いてちょうど一日行った所にある。あそこまで行ってしまったらほんとに何が起こるかわからないから、ここでいくらか心の準備をしておきたかった。
久しぶりの街の空気を吸う。匂いと言うほどではないが、何か変わった感じのある空気。昔、魔法の匂いがする、と言った奴がいたっけ。
そうやって本当にぶらぶらしていると、突然声をかけられた。
よう、とまるで毎日会っているかのように声をかけてきたのは、昔、同じ研究を進めていた男、ガイッシュだった。驚いたのは俺だった。
ガイッシュとは確か、その腕が見込まれてなんか大変なプロジェクトに引き抜かれて、それから会ってなかった。
積もる話もあったのだが、ガイッシュは取り敢えず来いよと俺を北側にある酒場『ホール・アズ』へと連れていった。そこはパーティをするにはもってこいの酒場として知られている。俺はそこで、よく訳はわからないがめちゃくちゃ盛り上がっている奴らと呑みまくってしまったのだ。
まあ、タダだし良いかなって思っていたのだが、朝起きたらすっかり、頭ををやられてしまっていた。