武具店もやはりにぎわっていた。在村銘ほどは流石にないものの、元来武芸者の都であり城下町である。出来の良い物が揃い、それらに人が集まるのは当然であろう。
幾人かはリョウルクのような在村銘を諦めた者もいるだろうが。
リョウルクはなるたけ人の少ない、小さな店に入った。「全具制覇-鬼殺」とある。
中はやはり人が少ないだけのことはあった、狭く暗い。リズマンはさほど影響も無いが、上から下から所狭しと混沌に武具を「散らかす」のは人間にはひどく見にくいものだろう。何より妖しい。見た事も使い方も判別つかぬ形状の物が旺盛に自己主張している。
リョウルクは顔を動かさずに店内を見渡した。リズマンの視界では一目で全景が見える程度の広さという訳である。
店主はどうやらいない様で、客の姿も無かった。店主のいる空間が無いとしても、とりあえず看板が出してあったという事は店である事に間違いは無かろう、と目についた一振りの異国刀を手に取り眺める。やや短めの刀身に意匠を凝らした重い柄が付いている。重い柄自体は振り易く良い物だろうが、この波打った刃はいかなる事か。まるで鋸の様である。物が斬れるか疑問を持たざるをえない。
それは元に戻し、他の普通風の物を物色する。
が、物は、奇天烈な物は無数にあっても普通の刀剣はほとんど見当たらない。やっと見つけた刀は、刀の意匠を凝らした鞘で刀身と思わせた物を抜くとえらく達筆で「驚天動地?」と書かれた古い板が出てきた。それを放り捨てるように戻すと異国の槍を手に取ったが、それも重いだけの儀杖槍であった。
短刀は刃が引っ込んだ。大弓は引くと音が鳴る。斧を振ると刃が飛んだ。戦槌は両端が先端。篭手は中身が詰まってた。具足は何故か刺々しい。鎧は童用だった。兜はリズマンには入らない。異国鎧は微動だにしなかった。外套(がいとう、マント)は厚さが指ほどあった。布袋は底が貫けていた。
「…………………………………………」
リョウルクは柄がくねくねと曲がる槍を持って、わなわなと震えた。それが伝わり槍が踊る。
――ここは、何屋だ……?
自問。答え無し。
頼り無い槍を打ち捨てようと手を振り上げたその時―ー
「あら珍しい! 客人だよ!」
いやと言うほど通る声が店を打った。
妖しげな品々が雪崩れを起こし、振り上げた槍が身悶えした。
リョウルクは何故か武具に襲われていた。
都での第一日であった。