「リョウルクは既に氏を与える段階に到達しておる。だが、いかんせん早過ぎるだろう。より鍛錬を積み、いっそう強靭となることこそがテーヴァの為でありリョウルクの為となろう」
これはリョウルクや嵩達、男衆の鍛錬を受け持つ街の道場主の言である。彼は強く、また剛い素晴らしい侍ではあったが、やはり大人衆でありいい意味でも悪い意味でも典型的な侍でもあった。
当然、リョウルクの氏の授与を期待していた取り巻きの男衆は道場主に食って掛かったが、当のリョウルクが何一つ動こうとしなかったため、結局は有耶無耶になり、忘れさられていった。
リョウルクは氏などには興味なかったのだが、この時の道場主の言葉にはどこか引っ掛かる物を感じていた。
――より鍛錬を積み強靭となること――
鍛錬。
今以上強くなり何をするのか。
強靭。
何の為に強くなるのか。
道場主―ー師匠の言いたい事は解る。テーヴァを守る侍衆に入る事こそがテーヴァ
の男衆の目標であり、最大の幸福、と。
なぜだ?
なぜそのようなことが幸福と結びつく?
思えばこの時からリョウルクは、深く考え始めていた。
四日後である。
リョウルクは街から姿を消した。