今日は蒼の月の半ば、もうすぐ舞会が始まるということでラジアハンド城はいつになく朝早くから慌ただしかった。
ルンドは自室にいた。
いつもより早くに目覚めた。
ふと何気なく窓を見やる。
窓の外はまだ薄暗く、正反対の動きのルンドは外に出るのを拒むようにその窓の面に留まっていた。
ラジアハンドで『舞会』と銘打った国々の親睦を深め合うのを目的とした国交会が開かれるのは蒼の月の初め。
それに向けてレイチェルが考えついた『華』は『宝刀探し』だった。
レイチェルがルンドとアルフェリアと出かけたクラリアットの結果は散々たるもので、収穫はゼロ、極め付けて結局はアルフェリアを一人残した形でラジアハンド城に戻ってくるという最悪の結果になってしまった。
ラジアハンドにアルフェリアがあの件に区切りをつけて戻ってきた時、ルンドには合わせる顔がない。
会ってから長い月日が経っている訳ではないが、アルフェリアという『少年』をどんな理由があったとしても、相手から見れば自分を見捨てておめおめと逃げ帰ったと取られても仕方のないことだ……
目の前の窓に写った自分の顔ををじっと見やる。
ただ何の感情も持たずに見つめていた。
ただそれだけなのに何故そんな顔をする?
何故そんな……あれを思い出させるような顔をしている!?
「……どうしてお前は私を選んだ?」
ルンドの心の奥深くにあった疑問が一時だけ口を、声帯を支配する。
返事が無いのは分かっていたが、期待せずにはいられない。
未だ知らされない理由を、目の前にそれがいるのだから……
「今日は舞会の警護の打ち合わせだったな……」
窓に写った自分の姿から逃げるように、隠れるように思い出し、気をしっかり持つように、叱咤するように口に出す。
パロルを素早く身に纏い、クォートを腰の剣帯にさすと何者かから自分を振り切るようにドアを開け、打ち合わせ場所の部屋へと向かった。