ファンタジア

リオ2

第二章   アスト

 使いの者から走り去った時から、リオは考えていた。
 ―――もう、誰にも頼れない 
      本当の一人ぼっちに、私は今なったんだ
 別に城が恋しくなったわけではない。誰だって一人は悲しいものだ。
 孤独を愛したリオだって、突然一人になったら心なしか淋しいものである。
 リオは、いつの間にか森の奥にまで来ていることに気付いて、足を止めた。異様な雰囲気が漂っているその森は不気味で、今にも吸い込まれそうな深い森だった。
「今夜はここで寝よう………」
 ここなら、使いの者には絶対見つからないだろう………
 そう思ってリオはこの不気味な森で一息ついた。不気味でも見つからないに越したことはない。リオは横になろうと地面に手をついた。その時、ふいに足音がした。
 ……嫌な予感がした。
「―――リオ!! 探したよ……」
 それは婚約者のアストだった。リオの顔は一瞬ポーカーフェイスをくずす。
 だがすぐに無表情に戻り、立ち上がった。
 いかにも探したという乱れた服装のまま、アストはリオに近寄った。
「どうして……城を抜け出したんだい……。リオ……」
 黙ったままのリオを見てアストはため息をついた。
「……分かってるよ……」
 リオから目線をずらし、申し訳なさそうにアストは地面を見た。
「あの時の門番との会話、君は聞いていていたんだろ?」
 リオはアストを軽蔑の目で見つめた。

【アスト王子、やりましたね! リオ王女が貰えるなんてスゴイことですよ!】
『ハハハハ、まぁ王女を貰っておけばこの国も僕のものとなるだろうしね。美人だし利用価値は最高の女さ!』
【アスト王子、ハッキリ言いますねぇ!】
『ハーハッハッハ!

「た、確かにあの時はそう思ってた。だけど今は君のことが本当に好きなんだ!」
「…………」
 リオは信じられないと言った様子でアストを厳しい目でもう一度見つめた。
「リ、リオ……」
「……もう、いいから」
 リオはアストへの目線をずらし、虚空を見つめたような表情になった。
「もう、わかったから」
「な、何がだい?」
「……私の事が好きじゃないってことは、わかってるから」
 アストの顔に焦りが見える。否定しようにもどうしたって信用しないという瞳がずっとアストの脳裏に焼き付いていた。
「私はもう誰も信じない。誰にもついていきたくない。このまま一人で生きてく」
「リオ……」
「だからもう放っておいて。どうやったって私は人を好きになんかなれない」
 そう冷たく言った時、アストは辺りが暗くなっている事に気付いた。

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