第十三章 今が幸せ
「……行こうぜ」
いつまでも環を見つめている二人を、セザールが呼んだ。
「あ、ああ。行くか……リオ」
「……うん」
三人は街に入った。
するとリオが突然立ち止まって、固まった。
「……アスト」
リオはポツリと言った。
そのセリフに驚いたフォルクスは、リオが見ている先を同様に見つめた。
「リ、リオ!?」
アストもこちらに気付いたようだ。
「あ、ああ……ヴァンは?」
「今宿屋探しにいってる。僕はここで荷物の番。……で、リオは?」
「…………」
さっとフォルクスの影に隠れる。
まだ、アストと話したい気分じゃない。
「……俺達はこれから何日かしたらステンダー領へいく」
リオの代わりに、フォルクスが答えてくれた。
「そうか……。リオ、君……知らないの?」
「…………」
リオは黙ってアストを見た。
「君の父さん……。今、危篤状態だっ……て」
リオの目に少しの動揺も見えなかった。
「だから?」
「だからって……じ、自分のお父さんじゃないか」
「そうよ。でもだからってなんなの? 死んだ人間に用はないわ」
「ま、まだ死んでないよ! 危篤だって言ってるじゃないか」
「どっちでも同じよ。……私は、もうあの国になんて戻らない」
「リオ……」
二人の会話を黙って聞くセザールとフォルクス。
しばらくの沈黙の後、アストが言った。
「……とにかく僕は帰った方がいいと思うよ。じゃ」
そして、アストは荷物の置いてある場所へと去った。
リオは俯いてこう言った。
「……行きましょう」
フォルクスが不満そうに答えた。
「いいのか? 行かなくて。たった一人の肉親なんだろ」
「……いい」
「………………」
リオはどうしても、この旅から離れたくなかった。