第十一章 他人と自分
「……ありがとう」
リオは二人に心から感謝し、そして詫びた。
ここまで他人に迷惑をかけたのは始めてだったからだ。
顔を腕と膝の間にうずくめているフォルクスと、セザールに何度も詫びた。
「別にいいぜ俺は」
セザールはさっぱりとした笑みで答えた。
顔を見せないフォルクスを見て、リオが申し訳なさそうにまたこう言った。
「私のせいで失礼なことを言われてしまって……ごめんなさい」
本当にやるせなかった。
自分の不始末で傷つけてしまったのかもしれない。
リオは、これ以上どう誤ったらいいのか分からなかった。
「俺は気にしてないから。お前も気にすんな」
うずくまったまま答えたフォルクスの声は、優しかった。
「じゃ、早くリルクリルの街へ行くか」
セザールがそう言うと、フォルクスはやっと顔をあげた。
「そうだな」
三人はまた馬にまたがって歩き出した。
「あ、傷……」
リオがフォルクスの耳元に血がついているのを見て、そう言った。
「あ? ああ。これは返り血だろう。俺が怪我したわけじゃない」
「そう……」
リオはやや暗めに頷いた。
「まだ気にしてんのか?」
その表情を察したセザールがリオに言った。
「気にするなってば。仲間を助けるのは当然のことだろ?」
そう言ったセザールに、リオは何も答えることが出来なかった。
――――仲間?
それは嬉しさでも悲しさでもない妙な感情だった。
「リオ、どうした?」
フォルクスが俯いたままのリオに尋ねたが、リオは返事をしなかった。
――――あんな人達ばかりじゃないって解ってるのに……
遠い過去のことを思い出していた。
仲間に裏切られた過去をどうしても忘れられずにいた。
今まで付き合ってきたフォルクスにも、こんなに親切にしてくれたセザールにもまだ不信感を感じていた。
――――信用出来ない。
この人達が私を裏切らないという、保証がない。
リオは首を振った。
―――ううん、違う。
裏切らない保証がないんじゃない。
私がこの人達の事を信じられないんだ……
自分でわかっていた。
もう少し他人に甘えてもいいという事を。
もう少し笑顔でいてもいいという事を。
でも怖かった。
馴れ馴れしくして、「お前なんかいらない」と言われるのが怖かった。
他人といるのが――――とても怖かった。