ファンタジア

レイチェル2

 勢いと勘だけで城を飛び出したレイチェルはその後のことを、ホントに……いや、まったく考えてなかった……。
 ラジアハンドの城から抜けだし、一番近い港町のロポポに立ち寄ると、そこには城の兵士達が誰かを捜しているようだった。
「誰をさがしているのかしら〜?」
 勿論レイチェル自身にはそんな事わからない……そう、レイチェルは……。
 ビショップと言う地位はこのラージバル大陸にある国、一つに一人と言う掟の様なモノがあり、普通は困難を極めると言う「ビショップの輪」の試練を乗り越えなければならないのだが、このレイチェルの場合は少し違っていた……。
 生まれたその日からビショップになることを運命づけられていたのだ。
 その運命は、後に明らかになると思うが……
 そう言った事実を全然しらないレイチェルはゲンにお城にこもっているどっかの姫よりも世間知らずなのかも知れない。
 知ろうと思えば出来たはずなのに……。
「兵士がたくさ〜ん……さて、どうしてかしら?」
「う〜ん」
「そうだわ! 聞いてみましょう〜!」
 レイチェルは皮肉にも、自分から兵士に捕まる選択をした……。
 しかし、その時! レイチェルのすぐ横から馬に乗った鎧の男が飛び出してきたのである。
「きゃっ!」
 そんなレイチェルの声には目もくれず、馬上の男はレイチェルから数メートル離れた豪華な鎧を着た男……神官騎士の中でもかなり地位が高そうな男の前に来ると、急いでいる様に告げた。
「隊長! どうやらレイチェル様はこの辺りにはいないようですが……なにしろビショップと言うのは唯一移動魔法も可能なので……移動範囲がこの大陸すべて……これでは、捜しようがございません!」
「うむ……そうなのだが、王の命令には逆らえん……まったく、レイチェル様も困ったお方だ……いくら王がまだ未熟だとはいえ城を飛び出すなど……」
その会話を聞いたレイチェルは「聞きに行かなくてよかったぁ〜」の一言……そして、港町から旅に必要な食糧等を少し頂いていくとビショップだけの移動魔法:レージラールを使って一瞬にしてその場から消え失せた。
 移動先は……カミノミゾシル……。
「それにしても……あの兵士達って……私の顔とか知らないんじゃ〜?」
 ラジアハンドのビショップは、代々……民や兵士には顔を見る機会はほとんど無いとい ってもいい位厳重に守られていて、顔を知っているのは王と大臣……そして、ものすごく高位の者でないと無理なのであった。
「まあ、そのうち……人相描きが出回るかもしれないわね〜」
 そんな事を考えているうちに、到着したのは月が綺麗なとある町……。
「……? どこかしら?」

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